労働省、時間給労働者への株式オプション普及へ法改正呼びかけ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

ハーマン労働長官は2000年3月29日、民主・共和両党議員とともに、企業が時間給労働者に対して株式オプション(自社株購入権)を与えやすくするための法改正を呼びかけた。これは割増賃金(時間外手当)を算出する基礎から株式オプションによる利得を除外するというものである。

株式オプションは、オプション保有者に対し一定期間、株を前もって定められた価格で購入する権利を与える。株価がこの価格を上回っている時にオプションを行使して株を購入すれば、株価と所定の価格との差額を儲けとして得ることができる。このため、株価を高めようとする動機を与えるために、取締役や俸給を受ける専門職に株式オプションが付与されることが多かった。しかし時間給労働者の場合には、週40時間以上の労働時間に対し5割増の割増賃金を支払う必要があり、株式オプション・プランをこの計算の算定基礎に含むべきか明確でなかった。割増賃金について規定するのは1938年制定の公正労働基準法(FLSA)だが、株式オプションが既存の報酬のどの項目に分類されるべきか明記されていないためである。そのため企業が、時間給労働者に対するオプション付与をためらうこともあった。民主・共和両党議員は、「公正(fairness)」という観点から取締役などと時間給労働者との間で、株式オプションの受け取りに関して差をつけるべきではないとの姿勢をとっており、公正労働基準法の修正案を上下両院に用意している。修正案は、議会で、ほとんど反対者がないものと予想されている。

今回の修正案に至った経緯を見てみよう。社名を特定されていない一企業に対して2000年2月に労働省が送った勧告状の中で、株式オプション収益を時間給労働者のインフレ(消費者物価上昇率)調整済み賃金に算入し、この金額をもとに割増賃金を設定するよう示唆した。これに対し産業界は、これまで規制されていなかった領域に政府が困難な要求を突きつけているとした。株式オプションの行使日によって違った利得を得ることになるため、労働省が指導するように、実現された利得を把握しなければならないとすれば、煩雑な事務処理と多くの費用が必要になるからである。例えば、GTE 社では5万3000人の時間給労働者に株式オプションを付与していたが、これを割増賃金に反映しなければならないなら株式オプション・プランを廃止せざるをえないと同社人事担当者は語っていた。労働省は、勧告状が一企業に向けられたものにすぎず、他の企業にも適用しようとするものではないなどとしたが、論争が続いていた。労働省は、産業界や国会議員との話し合いを繰り返すうちに、公正労働基準法の修正によって論争に決着をつける方針をとり、3月初めの下院小委員会の証言で労働省職員は議員に上記修正案の議会提出を呼びかけていた。

株式オプションを受け取っている労働者数は1990年代初めに推計100万人であったが、今では700万人から1000万人に達するとされる。また、ある調査によれば大企業の約10%が時間給労働者に株式オプションを与え、多くの企業が導入を検討している。

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