女性連邦職員雇用差別、5億800万ドルで和解

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

アメリカの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年6月

1974年から1984年までの期間にアメリカの声(VOA、海外向け短波ラジオ放送局)および連邦情報局から雇用差別を受けたと主張している約1100人の女性に対し2000年3月22日、連邦政府が5億800万ドル(1ドル=106.5円)を超える支払いを行うことに同意した。これは1964年の公民権法に関連して争われた集団代表訴訟の中で史上最高額の支払いとなる。雇用差別関連で、これまでに民間企業が支払った最高の和解金額は、人種差別に関して1996年にテキサコ社が支払いに同意した1億7600万ドルである。今回の和解金額は、その3倍近くに達する。

原告の女性たちは、上記2組織で働いていたラジオのアナウンサー、放送技術者、編集者などであるが、その訴えによれば、国務省が運営しているVOAと連邦情報局(現在は存在しない連邦報道局)で1974年から1984年まで、職務応募者に対して男性に有利な試験を行い経験・能力ともに劣る男性に職を与えたほか、幾つかの職務を男性だけに確保していたなど、一般に女性雇用差別が行われていた。

連邦政府は、雇用差別の事実はないとして22年間裁判で争い続けた。しかし今回の和解に応じるまで48件の訴訟のうち46件で連邦政府が敗れた。この間、連邦政府は2度控訴したが2度とも敗れ、その後、最高裁への上告も退けられていた。連邦法務局職員は、支払い金額が巨額になった要因として、長年の法廷闘争、女性職員たちが応募した地位で支払われていた賃金額とその金額についた利子、原告の人数の多さなどをあげている。原告の弁護士との話し合いの中で、法務省は5億800万ドルの和解金支払いに加え、すでに勝訴している46人の原告に遡及賃金、利子等として2270万ドルを支払うことにも同意した。

法務局スポークスマンのチャニング・フィリップス氏は、一連の訴訟の半分に勝訴していたならば裁判で争ってもいいが、連邦政府の敗訴はすでに明確だと述べている。一方、原告のブルース・A.フレドリクソン弁護士は、この和解から得られる教訓は2つあり、第1に雇用差別による費用が巨額になりうること、第2に解決を遅らせるとその費用が雪だるま式に膨らむことだと語っている。

2000年6月 アメリカの記事一覧

関連情報