大統領一般教書演説で社会保障制度改革を強調

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

クリントン大統額は2000年1月27日、議会で一般教書演説をし、今後の施政方針を明らかにした。同政権には重要な政策課題に取り組む長い時間が残されていないため、民主党ゴア政権が成立した場合に引き継がれるべき諸政策を提唱し、間接的にゴア候補支持を促すものとなった。

演説冒頭で同大統領は、景気拡大・失業率低下・財政赤字の削減など、クリントン政権の成果をあげ、今後も健全な財政を維持し、社会保障制度改革を進めることが重要であるとした。政府債務が縮小し、利払い負担が減ったので、これを公的年金やメディケア(高齢者医療保険制度)の存続のために使うよう促した。医療保険改革については、ゴア候補が提唱しているように、低所得層の子供たちを保険の適用範囲に含めるよう提案した。大統領選での争点となる所得税減税については、共和党ブッシュ候補案(5年で4830億ドル)の半分以下の規模とし、対象を低中所得者層に限定した。なお、労働問題に関連して以下のような提言がなされた。

  • 最低賃金の引き上げ
  • 仕事と育児の両立を保障するため、医療、高齢者介護支援、健全な育児を行う手段を与えなければならない。
  • 共働き世帯および2人以上の子供を持つ家計に新たな所得控除の実施(最高で1100ドルの減税)。その結果、単身者に対してよりも結婚している家計に重い税を課している「結婚への罰金」を軽減。
  • 女性労働者の歴史的低失業率にもかかわらず、女性は男性の約75%の賃金しか得ていない。そこで、男女平等賃金の促進を目的とする賃金公正法(Paycheck Fairness Act)の早期成立を目指す。
  • 同一内容の労働に対する男女間の平等賃金を達成するため、女性がハイテク産業において職を得るための訓練を実施する。
  • 401K のような企業年金で退職後の所得保障を得ている労働者は一部だけで、多くの労働者は退職後に備えて貯蓄する機会に恵まれていない。そのため低中所得者を対象に年2200ドルを上限として、個人の拠出1ドルごとに政府が1ドル拠出する退職貯蓄勘定(RSA)の新設を提言。個人の所得が4万ドル未満、家計所得8万ドル未満の者を対象にする。新たな勘定は銀行または民間の使用者によって運営される。2004年開始を目指す。
  • コンピュータを扱う能力がある人とない人との間の格差(デジタル・ディバイド)を縮小するため、すべての新任教師が情報関連技術を教えることができるよう訓練する。さらに1000の地域社会にテクノロジー・センターを新設し、成人向けのコンピュータ技能指導を行う。

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