AEEU、組合員の大幅増を予測

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年5月

合同機械電気工組合(AEEU)のケン・ジャクソン書記長は、同組合の組合員数について、向こう18カ月の間に50%純増すると予測した。現在、AEEUの組合員数は73万2000人、2001年半ばまでに30万人以上増加すると見込んでいる。

書記長はまた、労働組合会議(TUC)の組合員総数も向こう2年間以内に40%増加すると予測しており、他にも組合員数の増大に成功する組合があるとの考えだ。

しかし、最近公表された労働市場についての統計は、書記長の予測が楽観的すぎることを示している。英国の労働組合員数はピーク時の1979年に1200万人を記録して以降、現在の680万人まで落ち込んでいる。しかも、1999年9月に開催されたTUC年次大会で報告されたように、組合が存在していない職場は全体の47%に達している。1990年には36%だった。また従業員全員が組合に加入している職場は、1990年に7%だったのに対し現在は2%にすぎない。また、民間部門の労働者の5分の1が組合に加入しているにすぎない。

とはいえ書記長の楽観的な予測の背景には、AEEUが現在組合員数を伸ばしていること、組合承認やパートナーシップ協定交渉に取り組む民間使用者が増加していることがある。AEEUによると、1997年5月に労働党政権が成立して以来、100件以上の承認協定が調印され、それ以外にも60件のパートナーシップ協定が成立している。1月のTUCの発表でも、1999年1月~10月期に成立した承認協定は75件にも達し、うちAEEUが80%を占めるとも言われている。

企業には、承認法制が成立する前に組合を自主的に承認し、のちの労使交渉の方式について発言力を確保したいとの思惑が働いており、こうした状況の中で、企業はAEEUやTUCが先導しているパートナーシップ協定の検討に特に積極的になっている。また欧州労使協議会の出現などの影響を受けて企業風土(コーポレート・カルチャー)が組合友好的な方向へ変化していることも書記長の予測の根拠ともなっている。

加えて、TUCが「オーガナイジング・データベース」を設置したことにより、承認協定が増加する可能性はさらに広がる。現在試行中のこのデータベースはインターネット上で利用可能になるが、アクセスは労組の組織者に限られる。データベースには、内外の労使紛争や争議行為の方法の詳細が掲載される。また、英国の職場のうち組合のない47%についてのデータを集積することで、承認を勝ち取る戦略を立てやすくする。さらに労組間のコミュニケーションを深め、労組間競争による被害の回避にも役立つものと期待されている。

こうした動向を踏まえると、AEEUや労働運動の伸長に関するジャクソン書記長の楽観主義も根拠なしとはいえない。しかも、AEEUは2001年1月に42万人を擁する製造科学金融組合(MSF)のホワイトカラー組合と合併する方向で話がまとまりつつある。もし書記長の予測どおりになると、AEEUの組合員数は170万人に膨れ上がり、英国最大となる。

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