フォードでホワイトカラー争議

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

イギリスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年5月

フォードのホワイトカラーと専門職は、賃金交渉の決裂を受け、2000年2月21日、24時間ストライキを実施した。さらに同24日と29日に24時間ストライキ、3月6日からは72時間ストライキを予定している。穏健で知られるフォードのホワイトカラーが争議に訴えるのは今回が初めてである。

製造科学金融組合(MSF)と輸送一般労組(TGWU)に加入している技術、設計、研究調査スタッフやコンピューター・オペレーターを含む専門職等は、フォードが提示した賃上げ額を拒否し、1月19日から労働争議の可否を問う投票を開始していた。MSFによると、ストライキ支持票は63%、ストライキ以外の争議行動の支持票は約9割にのぼった。投票率は76%。

フォードのホワイトカラー従業員7500人の半数近くは労組に加入しておらず、これらの従業員は争議の影響を受けないが、それでもストライキによってフォードの在英工場のすべて(イングランド南部のサウザンプトン、エンフィールド、ダゲナムの各工場、北アイルランドのベルファスト工場)を操業停止に追い込むことができると労組は考えている。

争点は、フォードがホワイトカラーに提示した3年間の賃上げ幅。ブルカラーの場合は、11%の基本給引き上げと週労働時間の短縮(39時間から37.5時間)を合わせると3年間で実質15%の賃上げに相当し、1999年11月に妥結を見た。対するにホワイトカラーの場合は11.1%の基本給引き上げのみ。ブルーカラーと同率の15%引き上げを求めて今回の争議となった。

また労組は、5億500万ポンド(1ポンド=165.7円)の黒字になっている従業員年金基金を、1億5500万ポンドの赤字を抱える時給労働者の年金基金と統合するというフォードの計画にも反対している。労組は、フォードが黒字の一部を肉体労働者の年金引き上げに充てるのではないか、また年金制度を人員削減の資金源として利用するのではないか、などと危惧している。一方フォードは、新基金が赤字になっても黒字になっても、拠出額・受給額には影響しないとしている。

ダゲナム工場で1500人削減

フォードは2月18日、ダゲナム工場の従業員6500人のうち1500人を削減すると発表した。車体・組立ラインスタッフが対象。8月に生産体制を現在の1日2交代制から1交代制に変える。ポンド高が続く英国では価格競争力を強めた大陸欧州やアジアからの輸入車が増え、ダゲナム工場で生産している小型車のフィエスタは販売台数を大幅に落としている。

またフォードは欧州全体を対象にした合理化策を策定中で、工場閉鎖の可能性も指摘されている。

2000年5月 イギリスの記事一覧

関連情報