人材不足に悩む衣服産業

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年5月

ホーチミン市の衣服産業は、同市の職業紹介センターが、衣服産業の新規求人に対し十分な人数の労働者を紹介していないとの不満を表明した。これに対し職業紹介センターは、劣悪な労働条件と低い給与が根本的な問題だと反論している。

衣服産業では毎週何百人もの新たな労働者が必要だが、時には職業紹介センターが何カ月も1人の志望者も紹介できないことがある。ホーチミン市職業紹介センターのグエン・ティ・ニュン副所長によれば現在、衣服産業における初任給の平均は月25万ドンから45万ドンで、この他に昼食が無料で支給される。しかし労働時間は通常朝7時から夜7時までで、同副所長によれば、しばしばこれに加えて夜2時までのシフトを要求される。それでも月給の最高額は70万ドンにすぎない。

労働者が衣服産業を敬遠するもう一つの原因は、同産業の将来が不確実なことである。衣服産業で働くある労働者は、使用者が取引先から新たな契約を得ることができず、労働者が一時解雇されて仕事のない時があると語っている。

ホーチミン市の労働・傷病兵・社会問題局(DoLISA)職員であるグエン・ホアン・カン氏によれば、近年アジア経済危機の影響で多くの衣服産業の事業主が新たな契約を得ることに苦労しており、利幅の薄さから労働者に低い給与しか支払えない。

しかし、1999年に輸出加工区と工業団地を対象にする別の職業紹介センターは有効に機能した。この職業紹介センターはリン・チュン輸出加工区に2500人の衣服産業労働者を紹介することができたが、それを可能にしたのは高い賃金であった。同センターは衣服産業の外国投資企業38社に近年2万人以上の労働者を紹介し、いつでも労働者を紹介できる状態にある。ここでは労働者は月給70万ドンから100万ドンを得ている。この職業紹介センターを利用している外国投資企業では、経営が安定しており海外の顧客から多くの注文を得ている。

このような格差を解消するために、人手不足に悩む職業紹介所の所長は、衣服加工業者の加工料を均一にする政府介入が必要であるとし、衣服加工会社には労働者に予め労働条件を明らかにすることを義務づけるべきだとしている。

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