スト多発を懸念する労働組合

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年5月

ベトナム労働総同盟(VGCL)は、労使紛争の多発により外国投資家にとってベトナムが魅力的な進出先でなくなってしまうのではないかと懸念している。全国で1998年には62件、1999年には63件のストが起きており、労働問題専門家の中にはスト権が濫用されていると指摘する者もある。VGCL法務部のグエン・ホア・ビン部長は、「労働法は労働者にスト権を保障しているが、労使関係を悪化させる恐れがあるのでスト権は濫用されるべきではない」と語る。そしてビン部長はスト多発の原因として、労働法に整合性がないこと、また労働組合が弱かったり労働組合が職場に存在しない場合があることをあげた。さらに同部長は、労働法にさらに効果的な規定を設け、新たな規定について労使双方が学習することが必要であると述べ、この目的を果たすため、組合員の能力向上や、組合関係予算を増額し労組の組織を強化することが重要だとした。

1999年には34件のストが外国投資企業で起こったが、その中で労働組合がある企業は半数にすぎなかった。特にストが多発している外国投資家の国籍は、台湾、韓国、香港で、韓国企業だけで9件のストが発生した。ビン部長によれば、外国投資企業における労働組合が弱いことがスト多発の原因である。現行法では労働者が給料の1%を組合費として拠出し、使用者は給与支払い総額の2%を組合に納めなければならない。しかし外国投資企業は、この2%の組合費を免除されており、外国投資企業の労組の財政基盤を弱めている。ビン部長によると、外国投資企業でのスト多発には、使用者、労働者、そして政府それぞれに責任があり、法律文書が曖昧でベトナム人労働者が労働関連法規を熟知していないため、規則違反が起きている。

外国投資部門に次いでストが多い部門はベトナム資本の民間企業部門で、21件のストが発生した。法律上、6人以上の従業員がいるすべての企業は労働組合の設立を許可しなければならないとされている。しかし統計によれば、操業中の外国投資企業の50%、またベトナム民間企業の30%だけが同法を順守している。ビン部長によれば、多くの企業が故意に労働組合設立を無視している。

地域別に見ると、1999年にストが最も多く発生したのはホーチミン市で33件(1998年の44件から減少)。その反面、ビンズアン省(1998年5件、1999年19件)やドンナイ省(1998年5件、1999年8件)ではスト発生件数が増加した。VGCL職員によると、ストの原因となっているのは給料、残業、危険な職場での労働条件などの労働者の権利に関するものが多い。

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