遺伝情報による連邦職員雇用差別禁止

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年5月

クリントン大統領は2000年2月8日、即日発効した大統領令に署名し、連邦政府職員の採用・昇進の際に遺伝情報に基づく差別を禁止した。

人の遺伝情報全体を解読する研究が国際的に進められているが、近い将来、癌、糖尿病、心臓病など様々な病気と密接な関係を持つ遺伝子の異常が特定され、その情報を用いて医薬品や医療技術の開発が進むことが期待されている。しかし各個人の遺伝情報から潜在的な発病可能性や発病時期を予期できることから、高額の医療費がかかる病気にかかりやすい人に対する医療保険加入拒否や雇用差別に遺伝情報が用いられるといった弊害も出ている。採用に当たり遺伝情報を求められたり、遺伝情報のために解雇されたりする事例も増え、今までに少なくとも550人が就職や保険加入の際に差別を受けたとする調査がある。

大統領令の主要内容は、(1)採用や各種給付受給の際の条件として遺伝情報や遺伝子検査を要求してはならない、(2)遺伝情報から、ある病気にかかりやすいことを理由に昇進を拒否したり海外の任地への配属を許可しなかったりしてはならない、(3)職員や採用候補者に関する遺伝情報を取得したり公開してはならない、というものである。ただし(3)の例外として、その情報が職員への医療サービス提供や職場の安全衛生に必要な場合、また職業問題・医療研究者にデータを提供する場合をあげている。

大統領はまた、民主党のダッシェル上院議員やエドワード・ケネディ上院議員などが議会に提出している、遺伝子情報による雇用差別を民間に対して禁止する法律や、遺伝子情報を用いて保険会社が保険加入を拒否することを禁止する法律の制定を急ぐよう促した。団体加入保険については、1996年に遺伝情報の提供要求を禁止する法律が成立したため、個人加入の保険について同様の法律が求められている。

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