AFL-CIO、政策転換で不法移民労働者に寛大な対応へ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年5月

AFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)執行評議会は2000年2月16日、約600万人に上ると推定される不法移民に対する恩赦と、不法移民を雇う使用者に対して制裁を与える現行法の撤廃を求めることにした。従来、労組は不法入国者・滞在者を雇用する使用者に対して罰則を設けた1986年移民帰化法改正をおし進めるなど、不法移民に対し否定的な態度をとってきただけに、大きな方針転換となる。労組指導者は2000年4月より各地で公開討論会を開き、不法移民に対する恩赦への支持を求めていく予定である。しかし労組は、移民が国境を越えて自由に入国できるようにするつもりはなく、現実に機能していない移民政策の手直しを試みているにすぎないと強調する。1986年移民法改正では約300万人に恩赦を与える一方で使用者への制裁を盛り込んだが、その後も移民流入に歯止めがかかっていない。

労働市場が逼迫している今、移民がアメリカ人労働者の職を奪っているという従来の労組の主張に、もはや説得力はない。それどころか1990年代の人口増加の約40%が移民(大部分は合法)の流入によると言われる現在、労組が勢力を拡大するうえで、移民を取り込んでいくことが重大な課題になりつつある。

AFL-CIOは最終的には600万人に達しうる広範な恩赦を求めているものの、早急に恩赦を与えられるべき幾つかのグループに対しては、より迅速な対応を求めている。このグループに含まれるのは、1980年代後半および1990年代前半にそれぞれ本国を逃れたものの難民としての資格を認められていないグアテマラ人、ホンジュラス人、ハイチ人(以上あわせて約50万人)、内戦を逃れた1万人のリベリア人、そして前回の恩赦で不当に合法移民になることを拒否されたとAFL-CIOが主張している35万人の長期滞在者である。

しかしAFL-CIOは、高技能外国人技術者を特にハイテク産業に招き入れることを様々な企業に認めた招待労働者プログラムの急増には今後も反対し、各企業が本当に国内で見つけることができない高技能労働者だけを海外に求めているのか吟味する必要があるという姿勢を堅持している。

移民帰化法を無視する使用者は、最賃法や安全基準にも違反していることが多い。そこで労組は、合法的な手続きを踏まず海外から労働者を募集する使用者と、不法移民労働者の弱い立場を利用して劣悪な労働条件で移民を働かせている使用者に対しては刑事罰を科すよう希望している。労組は、現在の移民帰化法のように広範な制裁を定めながら施行を怠るよりは、制裁の対象を狭くして本当に悪質な使用者に制裁を加える制度の方が長期的に有効であると考えている。

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