公務員給与引き上げを巡る議論

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

2000年度の予算案において、公務員給与の大幅な引き上げに関しての議論が繰り広げられた。しかし結果的には、給与の大幅引き上げは経済が回復してからとの意見にまとまり、この案は先送りされた。

発端はワヒド大統領が2000年1月13日にインドネシアの公務員給与を引き上げることを盛り込んだ2000年度の財政案を発表したことである。大統領は、インドネシアの公務員給与は非常に安いため、適切な給与支給は公務員の士気向上に役立つだろうと述べている。例えば、ワヒド大統領の給与は3300万ルピア(4580米ドル)から1億740万ルピアに引き上げられ、メガワティ副大統領は2204万ルピアから8950万ルピアとなる予定であった。

公務員、軍隊、警察官は2000年4月から20%の引き上げになると予想された。公務員の最低賃金は月額17万5000ルピア(24.3米ドル)であり、民間企業の最低賃金よりも安く、この所得では生活に必要水準を満たすことができない。例を挙げると、蔵相の給与はインドネシア銀行の総裁の8分の1であるといわれている。そのため、公務員は公務以外の職に就くことで、低い所得を補ってきた。ワヒド大統領は、各大臣らに公職に専念して欲しいという願いも込めて給与引き上げに踏み切ったと考えられる。公務員側は概して、給与引き上げは、公職の腐敗を防ぎ、公平な政府を作り出す役割を果たすだろうと、肯定的に受け止めている。

しかし、経済が十分に回復しておらず、財政も厳しい今、何故急激に公務員給与を引き上げるのかと疑問を持つ研究者もいる。また、国会の議長であるアクバル・タンジュン氏も、給与額の少ない最下層の公務員や軍隊、警察官の給与引き上げが最優先であるとし、最低でも30%の引き上げが必要であるのに対して、高級官僚クラスでは、国の財政状況を把握して給与の引き上げを自粛すべきであると述べた。パラナディナムヤ大学のヌルコリッシュ教授は、公務員給与が上昇したからといって必ずしも腐敗が減少するとは限らないと批判している。

その後、2000年の1月17日に、大統領は公務員の給与引き上げを今年度には行わないことを発表し、今後の経済の回復状況によっては、給与引き上げの方策を採ることを明らかにした。続く2月8日にバンバン・スディブヨ蔵相は、公務員給与の100%引き上げ案を却下したことを明らかにした。

インドネシア政府がILOの結社の自由に関する条約に批准したことから、現在400万人の公務員は従来の公務員組合であるKorpriに強制参加する必要はなくなった。しかも、個別の組合を結成することも可能である(ただし警察や軍隊のストライキは認められていない)。

労働力省は今後従業員の訓練、労使関係、組織化の自由に関する法令を国会に提出する予定である。現在までのところ国内には、政府系の全インドネシア労働組合連盟(FSPSI)を含めて26の労組が存在する(労働力省の見解では労組の数は22である)。

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