週35時間制法・憲法評議会が4規定を削除

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

共和国連合(RPR)、フランス民主連合(UDF)などの保守系野党は、週35時間制第2法が事業の自由と法の前での平等の原則を侵害しているとして、憲法評議会へ提訴していたが、2000年1月13日にその判断が下された。憲法評議会は、提訴理由のほとんどを退けたので、法文の主な規定は有効とみなされたことになる。したがって、同法は2月1日から施行できるが、4規定は削除された。そのうちの2規定はきわめて大きな意味を2 つ象徴的な規定だと言えるだろう。

時間外労働

同法第5条は、企業が労働時間を週35時間に短縮した場合と短縮していない場合で、異なる時間外労働制度が適用されると定めていた。同法の規定では、前者の場合最初の4時間(35~39時間)について25%の割り増が定められていたが、後者の場合従業員に支払われるのは15%だけで、残りの10%は雇用助成基金へ納められることになっていた。この「待遇の格差」が憲法評議会によって「平等の原則に反する」と判断された。従業員だけの責任でそのような状況が生じたわけではないのに、労働時間を短縮していない企業の従業員を不利な立場に置くことになるという判断だ。憲法評議会は、この削除で「割増賃金が平等になり、時間外労働への課税が廃止される」と考えている。これにより、時短企業へ支払われる助成金の財源が失われた(政府は700万フランを見込んでいた)ため、新たな財源を探さなければならない。また、この規定は増割賃金を得るために従業員が39時間にとどまろうとする事態を回避する狙いもあったが、それも当て外れになった。

既存協約

憲法評議会は、年間労働時間枠の1600時間など、第2法のいくつかの規定が1998年6月に成立した第1法に基づいて締結された協約の基本的な条項の適用を妨げていると判断した。これらの協約はその締結時に実施されていた法律に従っているし、1998年に国会が決定した労働時間短縮の内容から予測できる結果を無視したわけでもなかった。憲法評議会はこのようなルールの変更に関して、新法は契約の自由と関連する「憲法の要求」を尊重しなかったと判断した。したがって、1998~1999年に締結された協約は、労使当事者によって破棄通告が行われない限り、期限切れまで効力が維持されなければならないと結論された。これらの協約が期限切れになるまで、時間外労働については2つの制度が実施されることになる。

ミシュラン修正

1999年9月に発表されたミシュランの大量解雇計画が大きな反響を巻き起こしたため、人員整理計画提出の前提条件として、労働時間短縮協約の締結もしくはその方向にそった真剣な交渉の開始が義務づけられた。憲法評議会は、国会がこの義務の正確な内容を明らかにしていないとして、無効の判断を下した。

最低賃金(SMIC)

新法では、「SMICは2005年まですべての従業員および新規従業員について『差額補填』の支払いによって保証される。ただし、労働時間を短縮しないパートタイム従業員は例外とする」と定められていた。憲法評議会は最低賃金の章をほとんど全面的に有効と判断したが、パートタイム従業員を例外とした規定を「同一労働同一賃金」の原則に反するとして削除した。

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