「雇用のための同盟」第5回会談、共同声明を発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

1999年12月の「雇用のための同盟」第4回会談が、労働側の60歳早期年金制の主張を巡って平行線をたどり、賃金政策について取り決められた再会談も延長になったが、その後もIG メタルの妥協を拒む態度により、一時「雇用のための同盟」そのものが危ぶまれる状況になった。しかしこの政労使の協力の成否如何により、現連立政権の鼎の軽重が問われることにもなるので、その後のシュレーダー首相の努力により、2000年1月9日に第5回会談が当初の予定より早く開催された。会談の結果は対立点の解消を齎すものではなかったが、労使双方の立場を取り入れ、なかんずく大量失業に対処するという最優先課題の実現を目指して、政労使3者の共同声明が発表された。もとより細部についての取り決めではなく、今後の労使協力の努力目標を大枠で定めたものであるが、現連立政権下において、今後の労使交渉においても言及される基本文書になると思われるので、その大要を以下に紹介する。

まずドイツの雇用状況を概括的に以下のように捉える。

景気回復については積極的な展望があり、税制と社会保険制度でも負担の緩和が一部実現され、今後も更に追及されていくことになり、また、物価も安定しているので、今後持続的な失業低下に寄与する恰好の前提条件が備わっているといえる。

次に「雇用のための同盟」の概括的方針が述べられる。

「雇用のための同盟」では、使用者連盟(BDA)とドイツ労働総同盟(DGB)の1999年7月6日の共同声明に基づき、間もなく始まる2000年度賃金協約交渉に対し、雇用創出を目指した、より有効期限の長い賃金協約の締結を推奨する。その際、労使間の利害を考慮して決定される賃上げ幅は、生産性の向上に依拠し、雇用創出を優先させて妥結される。労働協約を締結するその時々の使用者団体と産別労組(以下労使と言う)は、その責任の範囲内で、必要な各産業部門の差異を考慮して妥結を目指す。

さらに具体的な問題点に言及されるが、第4回会談で平行線をたどった60歳早期年金制度については、明確な表現は避け、労使の立場を考慮した表現で、以下のように述べられる。

長期的に社会保険に加入している労働者のために、その当事者に新たな社会保険の負担を生じることなしに、しかも新たな雇用創出に効果があるように、その当事者に要求可能な条件で、早期退職を可能にする方法が検討される。労使は労働協約で、事業所と産業部門の差異に応じた規則の制定を目指し、それには早期退職と共に高齢者パートタイム制度のより有効な利用が含まれる。このような処置により、失業の低下に早急に寄与することが期待されるが、その際中小企業に過度の経済的負担がかからないように考慮することも前提される。詳細は賃金協約交渉で取り決められるべきだが、連邦政府も、協約の取り決めに応じ得る、期限を限定した追加的立法措置を適宜施して行く。

他の問題点についても、概括的に以下のような指摘がある。

連邦政府は高齢者パートタイム法の改正を行うが、改正法は雇用創出に寄与し、期間をより長期に定める。また労使は、向こう2年間に、労働時間貯蓄に関する議論から出てくる提案を、労働協約の対象にする。さらに政労使は、パートタイム雇用をより魅力あるものにするよう努力していく。そのために「労働時間政策」という作業部会を設ける。

以上共同声明の概要を記したが、これに対してはその後使用者団体の一部から、労働側に、特にIG メタルに対して妥協し過ぎているとの声も出ており、早期年金制にたいする態度等も含めてフント使用者連盟(BDA)会長に対する批判も出ているが、今後の「雇用のための同盟」の運営の基礎になるものであり、今後の労使交渉の行方との関係でも注目される。

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