今年の予想に専門家の意見分裂

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

労働問題専門家の今年の失業動向に関する意見は一致せず、議論が起こっている。政府は4%のGDP成長を予想して、公式失業率は前年より2ポイント下がると見ているが、サンパウロ州立カンピーナス大学経済学部のマリオ・ポシマン教授は「1999年の公式失業率は7.6%と発表されているが、同じブラジル地理統計資料院の抽出見本調査からすると9.8%になっており、この水準が2000年に状況が好転する見込みは何処にもない」と判断している。

年間150万人の労働力が労働市場に参入してくることと、全体的な所得の低下から、家族の中で働く人数を増やして世帯当りの収入を維持しようとしていること、低い経済成長により、失業は減少しないと見ている。GDPが政府予想通り4%成長するなら、失業率は最低10%、GDPが2%成長なら失業率は10.4%になると予想した。サンパウロ州立データ処理財団(SEADE)のペドロ・ブランコ所長は、失業率が減少しない場合でも増加はせず、1990年代の失業増加一途のサイクルは終わると言う考えを持っている。

1990年代は国際金融危機、企業の激しい再編成、経済全部門の自動化などにより、ブラジルの雇用は多難の時代だった。1999年の失業率が1998年並みとなったことや、DIEESEのサンパウロ首都圏の調査で1999年4月と5月に記録した20.3%の高率失業率が、10月は19%、11月は18.6%となり、それ以降上昇を止めたことによって、少なくとも毎年失業率が増加するサイクルは終わったと見ている。12月は年末臨時雇用で失業率は低下し、1~4月はその反対に解雇が増えて一時失業率は高まるが、平均は1999年より低いと見ている。

エコノミスト達は、経済情勢が雇用を提供する能力を左右する他に、失業率は種々の要因が影響すると指摘する。所得水準もその一つである。一般に給料水準が下がると、家長の他にその妻や子供達が家計を支援するために働きに出て、失業率は低下する。ポシマン教授によると、低額所得クラスの14歳以下の児童が、250万人も学業を放棄して労働に従事していること、また、退職後の年金だけで生活出来ず、530万人の年金生活者が就労していること、さらに340万人が二つの職を掛持ちして、必要所得を得ようとしており、正常な市場ならこれらが占める職場は、一つの雇用として提供されるものであると説明している。このような事情は、経済が成長して雇用を増加させると同時に、働くべきでない人口が労働市場から引き揚げて、生活出来る条件を提供し、成長してくる労働力に職場を譲れる状態を作り出す必要があると主張している。それが現在の経済情勢下では反対に進んでいる。社会保障制度の財政破綻を救う手段として、定年退職年限を引き上げる現行法規なども、新雇用が増加しない原因の一つだと指摘している。

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