ベア調整は僅か

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

労組の研究機関であるDIEESEの発表によると、1999年の全国スト発生件数は1998年に比べて26%減少、レアルプラン発令年の1994年比で60%減少した。同時に1999年にインフレ指数の一つである全国消費者物価指数であるINPC以上のベアを確保した労組は31%にとどまった。1998年は61%がINPC以上を確保した。1999年は下半期からのインフレ上昇傾向のために、失業増加にも拘らず、労組に物価上昇に伴う給与目減り分の補充を要求する気運が起こり、ベアを1999年の要求優先に掲げると労組指導者は発表していたが、結果は前年より悪くなった。

DIEESEの発表を見ると、銀行、金属など強力な組織力を持つ労組だけが、インフレ並のベア調整を受け取っている。DIEESEの調査担当者によると、大部分の労組は何年も累積インフレ分を補充出来ないままになっており、1999年の補充要求は実現せず、期待を2000年に持ち越した。労組では、今年の政府の予想によればGDPは4%成長し、国内外に1998~1999年の様な経済混乱はなく、金利は安定し、為替は国力に応じて適度の水準に維持される。インフレは政府の予想内に納まり、失業率の低下が予想出来るとされているために、今年のベア要求は労組に有利になると期待している。

DIEESEも2000年の経済に対して楽観的な予想を持っているが、労働者は平均して、1999年の1月よりも不利な状態で2000年の1月の新局面を迎えたと発表した。研究によると実質給与は平均6%低下、最低給与は実質4.4%、サンパウロ市の基本必需品セット(注1)は9.67%値上げ、DIEESEの物価指数は1999年に9.57%上昇した。DIEESEは2000年のGDPを2.5%と低く予想している。その理由として、政府財政の構造的改革が政治的圧力のために困難となっていること、増税で財政再建を試みている結果、個人、企業ともに増税負担が大きくなっていること、経済活動の回復が輸入増加を起こすために、政府はいつか輸入にブレーキをかけることにより、政府が予想している4%成長は阻止されると見ている。貿易収支は国家経済の重要な構成要因となっているために、政府は今年を黒字にする必要がある。

ブラジル経済は、経済が成長に向かう度に輸出増加以上に輸入が増加する構造になっており、増産しようとすれば生産設備の設置から輸入増加を伴う。輸入増加を支えるだけの大きな輸出増加が起こることはなく、輸入制約政策を採用して、成長は抑えられると見ている。1998年の56億ドル(1ドル=106.1円)以上の貿易赤字に続いて、1999年も約12億ドルの赤字となった。政府は2000年に50億ドルの黒字予想(1999年も110億ドル黒字を予想した)を予想しているが、DIEESE、赤字は減少するものの2000年も赤字から脱出できないと見ている。1999年1月の金利は年間31.1%であったものが、2000年1月は18.8%へ下がって、経済回復に益すると考えられているが、金利を下げ過ぎると経済回復が早すぎて、輸入増加を起こすために、金利も慎重に取り組まざるを得ない。また政府は盛んに、ブラジルは危機を脱出して、国際信用を回復したと発表しているが、DIEESEは、国内経済がまだ国際金融の動向次第に全面依存していて、経済の基盤は弱く、今年の経済動向回復はまだ固まっていないと評価している。

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