労働コスト、依然企業立地外国移転の主な理由

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年3月

ドイツ商工会議所連合会(DIHT)は、最近、従来から労働コスト等との関係で論じられたドイツ企業の立地条件に関連して企業の国外移転に対する調査を行い、依然として国内の労働コストが高いことを理由に国外に生産拠点を移転する企業が多いという調査結果を明らかにした。特に運輸業部門と企業向けのサービス業者にこの傾向が強く、全体としてドイツ国内の雇用の創出に有利に作用していないとの結果が出た。

前2回の調査と比較した今回の調査結果によると、向こう3年間に立地移転を企図するとした企業は、1993年、1996年、1999年を部門別に見ると、製造業部門ではそれぞれ30%、28%、21%、建設業部門ではそれぞれ6%、12%、8%、運輸業部門では16%、9%、15%である。サービス業部門では、1993年の調査では国外への立地移転を回答した企業はなかったが、1996年と今回の1999年には、向こう3年間の移転計画を回答した企業は、それぞれ8%、17%に達した。その中でも、特に電子情報処理、企業コンサルタント等の業種で立地移転の傾向が顕著だった。

製造業部門で国外移転が多少減少した一つの理由としてDIHTは、1996年から1998年の賃金協約交渉で妥結額が控え目で、賃金コストの負担が減ったことがであると見ているが、それでも移転を企図する企業の割合は依然として20%を超えており、2000年から2002年にかけて4万人の雇用創出がドイツ国内ではなく、国外でなされることになると見られている。また運輸業部門では、環境税の導入による税負担の回避と労働コストの高さが主な移転理由としてあげられている。さらに企業向けのサービス業者に関しては、グローバル化の波の中でサービスを委託する企業が国外に移転するのに伴って、立地を移転する傾向が目立っている。

これに対して、ドイツ企業の国内回帰の動きは余りないだけでなく、外国企業でドイツに拠点を移す動きもそれほどなく、DIHTは、労働コスト等の基本的な立地条件としてドイツは国際的に有利でない傾向が続いており、国内の雇用創出のためにも経済政策で基本条件の改善を図るべきだとしている。

ちなみに、調査結果によると、ドイツ企業が立地を移転する主な地域は中欧と東欧である。

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