「雇用のための同盟」第4回会談、60歳早期年金で労使平行線

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年3月

シュレーダー首相主催の「雇用のための同盟」第4回会談は、1999年12月12日に開かれたが、労働側がかねてから主張する若年者の雇用枠確保のための60歳早期年金制を巡り、開催以前からの労使対立が持ち込まれて歩み寄りが見られず、低賃金層のための補助金支出等で一定の合意を見たほかは、結局平行線をたどることになった。さらに賃金政策を巡る再会談が23日に改めて予定されたが、これも産業連盟(BDI)などの反対で2000年1月半ばに延期されることになり、労使の批判の応酬により「雇用のための同盟」自体の前途が危ぶまれる状況が生じている。

60歳早期年金制とその財源となる労使双方負担の協約賃金基金を強硬に主張してきたのはIGメタルで、リースター労相も一定限度で賛意を表明していたが、これに対して使用者団体側は一貫してコスト等を理由に反対し、使用者連盟(BDA)を先頭にして、やはり早期年金移行を可能にする現行の高齢者パートタイム制の改革で対処すべきことを主張してきた。フントBDA会長は、労働者の実質賃金等を確保した長期的な賃金協約を締結し、この協約による賃上げ分の一部を事業所基金に組み入れて積み立て、この基金から若年労働者の将来のための事業所年金と高齢者パートタイムによる早期年金移行に伴う年金支給の減額分を賄うべきであると以前から主張してきた。そして、基金のどの範囲を高齢者パートタイムの促進に利用すべきかは、専ら事業所協定で事業主と従業員が決めるべきで、労働協約で早期年金利用の法的請求権まで認めることはできないとしてきた。

シュルテ労働総同盟(DGB)会長は、DGBとBDAの「雇用のための同盟」第3回会談の共同声明文書を引き合いに出し、労働協約によって控え目な賃上げを長期的に締結することと60歳早期年金制導入との妥協を使用者側に求めたが、功を奏せず、結局 DGBとBDA自体の対立を生じることにもなった。

このような中で、ツビッケルIGメタル委員長が、早期年金問題の妥協は不可能との前提で、2000年2月に始まる金属産業の賃金協約交渉では賃上げだけを目指すという発言を繰り返し、しかも賃上げ率4%以上を要求するとして、対立は更に進展した。しかし、ツビッケル委員長の強硬な発言に対しては他の産別労組 ノも批判が多く、シュレーダー首相も「雇用のための同盟」維持の立場から批判を加えている。特に労働側では、他の有力労組である鉱山・化学・エネルギー労組(IG BCE)のシュモルト委員長が、高齢者パートタイム制の改革と長期的に年金保険料を支払っている労働者のための早期年金移行を組み合わせる従来の持論を再度展開し、フントBDA会長を始めとして使用者側もこの案を土台に交渉を継続する歩みよりの姿勢を見せている。

これに対して、ツビッケル委員長は12月29日にシュモルト委員長の妥協案にも反対し、あくまで強硬姿勢を貫く姿勢を示しており、ドイツ賃金協約交渉の中心となる金属業界の交渉開始を2000年2月に控え、1月半ばに開催予定の「雇用のための同盟」第5回会談の今後の動きが注目される。

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