海外就労希望者に対する政府キャンペーン

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年2月

労働力省は、海外での就業希望者に対して正しい就労手続きと、労働者の権利と義務について知ってもらおうと、国内でのキャンペーンを行うことを発表した。同省は、このキャンペーンによって、海外への就労開始から帰国まで、労働者のトラブルを少しでも減少するようにとの期待を込めているようだ。

労働力省は、スマトラ、ジャワ、西ヌサテンガラ、スラウェシの地方村にキャンペーンチームを派遣し、海外就労者に関する情報を回覧板・パンフレット・小冊子・ビデオなどを使ってできるだけ多くの人に伝えたいとしている。

インドネシアの労働者が海外でトラブルに遭遇する最大の原因は、労働者の権利と義務に対して無知であることと見られている。例を挙げれば、出国の際に職業斡旋業者や仲介人に仲介料を騙し取られるケースが非常に多く、これらの業者は労働者を海外に派遣させた後は何の事後ケアもないという。

出国した後のトラブルも多い。インドネシアでは、その宗教的背景から中東やマレーシアといったイスラム国で、男性は工場・建設労働者、女性はメイドとなるケースが多い。サウジアラビアでは、数千ものインドネシア人女性が、使用者からの暴行、賃金未払いといった様々なトラブルを抱えてインドネシア大使館にやってくるという。こういったインドネシア人女性のほとんどは、英語もアラビア語も話すことができず、海外への旅行は初めてで、農村出身のために都市の近代風の生活様式に不慣れである。最近のケースでは、1999年11月に、サウジアラビアでメイドとして働いていた2人のインドネシア人女性が、使用者に暴行を受け帰国した際に、トランジットで立ち寄ったカラチ空港でも警察官の暴行に合うといった痛ましい事件があった。

労働力省は、現在、海外労働斡旋会社協会(Association of Labor Exporting Companies)と協力して、出稼ぎ先の労働法や文化を学んでもらうことを目的に職業訓練プログラムを実施することを予定している。

同省は、フィリピンの例を挙げ、フィリピンでは海外就労者の技術・言語訓練がしっかり行き届いており、そのために大きな問題が起きないのだとしている。

労働力省の推計では、150万人のインドネシア人が海外(主に、シンガポール・マレーシア・中東地域)で働いていると見られており、彼らの仕送りは10億米ドルにも上り、重要な外貨源となっている。

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