建設大手ホルツマンの倒産、首相調停で救済

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年2月

2000年2月ドイツ第2の総合建設会社フィリップ・ホルツマン社(本社フランクフルト)は、24億マルク(1マルク=53.86円)の新たな赤字を出して債務超過による経営不振に陥り、最大債権者であるドイツ銀行を中心とする銀行団、ヘッセン州政府等の救済措置が練られていたが、これが不調に終わって事実上倒産し、11月23日フランクフルト簡易裁判所に対して会社更生手続き開始の申立てがなされた。

フランクフルト証券取引所におけるホルツマン社の株式も急落し、倒産が決定すると、ドイツの企業経営史でも最大の倒産の一つとなり、同社の従業員は国内1万7000人、世界で約2万人であり、下請けなどの関連企業も含めると6万人に達するので、雇用にも深刻な影響が出ることになった。ホルツマン社の労働者も、本社前やメインバンクであるドイツ銀行本店前で大規模な抗議集会を開き、高失業率への対処を最重要課題とする連邦政府にとっても座視できない事態となった。特に州政府レベルでの選挙で連戦連敗しているシュレーダー政権にとって、失業率が10%を割った(失業者数は再び400万人を割った)おりだけに、2000年早々のいくつかの州議会選挙を控え、放置できない事態となった。

そこでシュレーダー首相はクラウス・ヴィーゼヒューゲル建設・農業・環境労組(IGBau)委員長(連邦議会議員)、ユルゲン・マーネケ・ホルツマン社経営協議会会長と協議し、11月24日になって同社存続の鍵を握る銀行団に対する仲介工作に乗り出し、連邦政府が2億5000万マルクの巨額の融資、債務保証を行うことを条件に、ホルツマン社の事業存続について銀行団の合意を取り付けることに成功した。銀行団が合意した同社の財政再建案の融資規模は43億マルクに上るが、このうち連邦政府は、同社の自己資本を補填する1億5000万マルクの融資と1億マルクの欠損に対する保証で再建案に協力し、銀行団を構成する各債権者銀行は貸付け金額に応じて融資を負担することになる。これに応じて、ハインリヒ・ビンダー・ホルツマン社社長が会社更生手続き開始の申立てを撤回し、雇用に深刻な影響を及ぼす倒産は回避されることになった。

ただ、このように最悪の事態は回避されたものの、連邦政府の一企業に対する助成がなされたので、企業救済の補助金に関する EU 指針(直接、間接の補助金は指針と抵触する)との調整につき、政府は EU 委員会の承認を得なければならず、またホルツマン社自体にも、3000人の人員削減、賃金カット、ドイツ国内の全不動産売却による財政立て直し努力等難題が控えている。

今回の救済劇に対しては、ホルツマン社の労働者がシューレーダー首相に喝采を送ったのは当然として、組合側もヴィーゼヒューゲルIGBau委員長が、米国流のやり方がドイツで地歩を固めていない証拠だと結果を称賛しているが、建設業界の中小企業や納税者団体を中心に、政府の補助による救済は市場経済の競争原理を歪め、業界の雇用状況が厳しい中で大企業を優先させるものだと批判の声が上がっている。また、ホルツマン社の幹部に対して厳しく責任を問い、退陣を求める動きが早くも出ているだけでなく、監査役会を構成する銀行役員に対しても、監査業務を怠ったことを追及する声が上がっている。更に、今後ホルツマン社への注文が減ること等を指摘し、同社の生き残りを危ぶむ声なども業界から出ている。

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