給与・賃金規則草案に外国投資企業が反発

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年2月

二重価格制度の是正などを内容とする、外国投資促進を目的とした政令53号が既に施行されている。この新たな外国投資企業の経営環境に適合した給料・賃金規則の作成に取り組んでいる労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)は1999年10月19日、ホーチミン市に外国直接投資クラブ傘下のゴルフコース経営協会の会員を招き、同規則草案について外国投資企業の意見を求めた。

この草案は、外国資本が関与している企業に対し、ベトナム人従業員が勤続期間中、少なくとも3年に一度、昇給を行うよう義務づけている。例えば勤続18カ月以上3年未満の直接労働者には、通常の労働環境で働く場合、最低水準よりも10%増し、有害な労働環境では15%増し、危険な労働環境では20%増しの給料を与えなければならない。一方、勤続18カ月以上3年未満の労働者は、通常の労働環境で働く場合、少なくとも最低水準よりも30%増し、勤続3年以上の労働者は最低水準の少なくとも70%増しの給料を得ていなければならない。これに対し、ゴルフコース経営協会のある外国投資家は、従業員各個人の能力に拘わらず昇給を行うことに反対し、全ての労働者に対し同時に昇給を行うことは馬鹿げていると述べた。また労働者が喜んで受け入れる給与水準を保つことに異議のない他の外国投資家も、この問題は労働市場に任せ、各企業が失いたくない労働者に高い給与を支払うという形にすべきで、もし定められたように能力や精勤に拘わらず昇給するならば、企業の負担が増し、結果として失業の危険が増すばかりであろうと懸念が表明された。さらに同経営協会の一会員は、経営する会社の求人に応募した、良好な学業成績を持つ労働者の約70%が同社が定めた求人要件を満たさなかったとし、これを訓練(勤続)期間が長いからと言って訓練(勤続)期間のより短い労働者よりも優れているとは限らないことへの傍証とした。

一方、現在の規則は外国投資企業におけるベトナム人労働者が毎年1カ月分のボーナスを得るように定め、ボーナス基金を生産費用(繰り越しは5年まで)に算入することを認めている。これに対し草案は利潤の一部をボーナスに充てるよう定めており、新たな負担に増えないか投資家が大変懸念している。現在、多くの会社が利潤を上げていない場合にもボーナスを支払っているが、草案は赤字会社にボーナスを半減することを認めている。従って草案のボーナス規定は、外国投資企業にとっても労働者にとっても利点が無いという意見が出された。

MoLISAの給料・賃金規則草案が企業経営に深く介入するものであるという意見が多かったが、ゴルフコース経営協会会員の大部分は、最低賃金制度などの現行の給料・賃金規則が十分満足のいくものであると肯定的な評価をした。

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