8万人のミャンマー人労働者強制帰国

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

タイの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年1月

1999年11月3日に外国人労働者の就労期限が切れることに関して、外国人労働者を雇う経営者側と地方商工会議所からの政府への要求は退けられ、8万人以上の外国人労働者達(ミャンマー人・カンボジア人・ラオス人など)が強制帰国させられることになった。タイでは建設業・漁業・農業などの労働集約的な産業で、慢性的な人手不足が起こっており、その労働力の多くを外国人労働者に依存してきた。外国人労働者の多くはミャンマー人で、不法滞在している者も少なくない。今回、就労期限の延期ではなく強制帰国に踏み切ったその背景には、1999年10月1日のミャンマー大使館立て篭もり事件がある。この事件で、バンコク市内の駐タイ・ミャンマー大使館に、ミャンマー人武装グループがミャンマー軍事政権に拘束されている政治犯の釈放を求め大使館員などを人質にして立てこもった。人質は無事開放されたが犯人はいまだ捕まえられていない。ミャンマーからの政治犯などが不法労働者としてタイに入国し政治活動をした場合、不法労働者がその運動の手助けなどをする恐れがあるという危惧から、このような強制帰国措置に踏み切ったと考えられる。

北タイのターク県では、150以上の工場が閉鎖され、1999年11月3日の就労期限を前に何千人ものミャンマー人が解雇され、タイとミャンマーの国境を流れるモエイ川を渡って本国に帰国する姿が見られた。しかし、ミャンマー国境は閉鎖されており、帰国できないミャンマー人が国境近くでキャンプを張り、入国を待機している状況である。このキャンプを運営する費用は労働福祉省の予算から捻出されている。このような状況に対して、人権活動家達から批判の声も上がっている。ちなみに、同県には約5万人の工場労働者と約3万人の農業・サービス分野に従事するミャンマー人労働者がいると推測されている。

法律では、不法労働者を雇った経営者は、10年間の禁固刑か10万バーツ(1バーツ=2.73円)の罰金に処される。タイの精米工場や農業部門では多くのミャンマー人が低賃金でこれらの仕事に従事しており、彼らが帰国した後どのようにその労働力を穴埋めするかが非常に大きな問題となっている。ソムチャイ・ワッタナ雇用局長は、「外国人労働者を雇用している工場経営者は、タイ人労働者が働きたいと思うような職場にするために、賃金引き上げや福利厚生を向上させるよう努力してほしい」と述べている。

タイでは2年前に、ゴムプランテーションや精米工場、工場、漁業、建設などの18部門、37県の外国人労働者の雇用を承認した。今回の問題で、政府は18職種・16万3098人の外国人労働者の雇用期間を2000年8月31日まで延期することを1999年11月2日閣議決定したが、一時的な解決策にしかなっていないというのが現状のようである。

2000年1月 タイの記事一覧

関連情報