障害者の就労後にも公的医療保障存続へ、両院で法案可決

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年1月

下院は1999年10月19日、身体障害者が就職する際に、継続して公的医療保障に加入することを認める法案を412対9の大差で可決した。クリントン政権もこの問題に強い関心を持っており、上院でも類似法案が1999年6月に大差で可決されている。上院と下院の法案の間には、いくつか異なる点があり、今後、内容の調整が行われる。

下院法案は、医療扶助制度であるメディケイドへの加入資格を各州が緩和することを認め、現在メディケア(注・公的医療保険で、65歳以上の老齢年金受給者と65歳未満の障害年金受給者と慢性腎臓障害者を対象とする)に加入している障害者が就職した際にメディケア加入期間を10年間延長するという内容になっている。このほか同法案は、障害者で社会保障給付を受けている者が労働市場に参入するためにリハビリテーションを受けるためのバウチャー(引換券)支給を定めている。

現行法では、障害者が就職すると、障害者対象の社会保障給付は最長でも一年で打ち切られ、メディケア加入権は最長で4年後に打ち切られる。このため現行制度は、公的医療保障を受けている障害者の就労意欲を阻害してきた。就労後の期待所得が低い障害者が求職意欲を持たないことは勿論だが、期待所得が高い障害者も、公的医療保障が打ち切られた後に、既に発症している病気や障害の治療費を負担し、かつ政府が提供している広範な障害者向けサービスを提供する民間医療保険を得ることは難しいため、極めて高額になりかねない医療費負担を恐れて公的医療保障に留まることが多かった。

議会予算局によれば約800万人が連邦障害者給付を受給しており、自発的にその受給を辞退する人は珍しい。同局の推計によると、同下院法案が施行されれば次の10年間に成年障害者約3万5000人の労働市場参入を促進することになる。

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