3000人の労働者、失業保険の実施を要求

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

バンコク周辺の工業地帯の労働者約3000人が、1999年9月20~21日に渡り、首相官邸近くで失業の公的補助を求めて抗議活動を行った。

失業保険の実施を求めての労働者の活動は、1997年以降度々起こっていた。近年最も大きな抗議活動としては1998年、何百人もの労働者がチュアン首相官邸に集まり、経済危機で失業した労働者に対しての公的補助を定めた法令を政府が発行するよう求めた。これによって、政府は労働者を救済するための方策を講じると約束したが、未だに政府の計画に何ら変化は見られない。LCT(タイ労働会議)のサマン・トムヤ事務局長は、政府が労働者の要求に対してきちんとした対応をとらなかったためにこのような抗議活動が起こったと分析している。そして、同氏は政府に約束の遂行と、失業者を救済するため、社会保障制度の拡大を定めた法令を求めている。経済不況によって使用者が工場の閉鎖や労働者の解雇に踏み切らざるを得ない状況から、多くの労働者が雇用に対して不安を持っており、それゆえに新しい法令ができ、雇用保障制度がすぐに実行されることが望まれる、と付け加えた。

この抗議に対して労働省は、失業保険を社会保障制度の中に組み入れることになった場合、労働者は給与5%の社会保障費負担を余儀なくされるだろうとコメントしている。一度制度が開始されれば、1.5%が社会保障基金へ、3%が児童高齢者福祉基金へ、5%が失業保障基金へと、月給の約1割が社会保障費として控除され、労働者にとっては大きな負担になるだろうとしている。

社会保障制度に関しては、2001年から、5人以上の従業員を抱える職場にも社会保障制度が適用されることとなった。現在この制度が適用されるのは10人以上の職場であったが、今後は2005年までに10人未満の職場に、2006年または2007年までに農業・漁業分野まで適用範囲を広げる予定であると社会保障局は発表している。

しかしながら、タイでは少なくとも離職率の高い労働者を抱えた約20万の中小企業が存在することから、10人未満の職場に社会保障制度を適用するのには困難があると見られている。

現在の社会保障基金は、500万人の労働者と1000億バーツ(1バーツ=2.66円)の資金で成り立っている。社会保障費は政労使共に給与の1%を拠出することとされているが、2000年には使用者が2%、労働者が3%の負担増になる予定である。(政府負担は1%負担で据え置き)

今後の社会保障制度の見通しを立てるべく、労働省、ILO、JICAは共同で、失業保険、医療保険、傷害保険、死亡保険、養育費、退職者といった項目まで社会保障制度を拡大できるかどうかのフィージビリティー調査を行っている。

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