連邦議会、悪天候手当につき審議

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

悪天候手当についての法案の審議が1999年9月9日、同年6月の政労使の合意を土台として、連邦議会で開始された。これは建設業界でこの数年間色々議論され、懸案となっていたものだが、以下のような経緯に基づいている。

悪天候手当は、元来冬季の人員解雇の防止を目的として、建設業界における操業短縮手当の特殊形態として1959年に制定され、冬季の悪天候の一時休業の際に連邦雇用庁から建設労働者に支給されたものである。ところが1996年にコール前政権がこれを廃止したため、1996年~97年の冬季に建設業界の失業者が急増し、このため1997年の建設・農業・環境労組(IG BAU)と建設業使用者連盟の合意に基づき、同年11月、次の3つを柱とする「建設業における年間を通した雇用確保に関する法律」が成立した。

  1. 労働者は冬季の悪天候休業に際し、最初の50時間は夏季の超過労働で積み立てた労働時間貯蓄(若しくは年次有給休暇)で自ら調整する。
  2. 50~120時間については、使用者が積み立てる冬季割当金から労働者に休業手当が支払われる。
  3. 121時間以上については、連邦雇用庁が休業手当を全面的に負担する。

ところが1998年末までの冬季失業者が予想に反して増加したため、再び労使の対立が生じ、組合側は従前制度の復活を主張した。また同年総選挙に勝利した社会民主党(SPD)と緑の党の連立合意でも悪天候手当の復活が盛り込まれ、これに応じて労使の交渉も行われていた。しかし労使交渉は難航し、最終的には首相が特定産業の労使交渉に直接仲介役を買って出るという前例のない形で、6月の政労使間の合意に達し、それに基づいて今回連邦議会で法案の審議が開始された。

政労使の合意に基づく法案の骨子は、従前の悪天候手当を復活させるものではないが、1997年法の3つの柱を、次のように労働側に有利に修正するものとなった。

  1. 労働者の労働時間貯蓄による自らの調整を最初の30時間までとする。
  2. 使用者の冬季割当金からの支払いは31~100時間までとする。
  3. 連邦雇用庁による休業手当の支払いは101時間以降とする。

この他、連邦議会議員クラウス・ヴィーゼヒューゲルIGBAU 会長が強調するように、悪天候を理由とする解雇は禁止され、使用者はこれに違反すると、連邦雇用庁に損害賠償金を支払わなければならなくなる。

この法案は議会を通過した後、11月1日に施行される予定である。

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