連邦政府、争議権条項変更の意向

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

連邦政府は、予てからの労働側の要求を容れて、争議権条項を修正する意向である。これは1999年9月8日のベルリンにおけるIGメタルの会議で、ゲルト・アンドレス労働政務次官(SPD)が社会法典第3章146条、174条(従来雇用促進法116条と呼び習わされていた争議権条項)の改正について言及したものである。

現行規定では、ストライキによって間接的に影響を受ける同一産業部門の労働者は、操業短縮手当の支給を連邦雇用庁から受けられない。この規定は、1986年にコール前政権が労働組合側の激しい反対を押し切って可決したもので、これ以前には、ストライキの影響を受けて勤務を行えない非ストライキ地区の労働者は、連邦雇用庁から操短手当を支給されることになっていた。連邦政府は、今回の法改正によって操短手当の支給を再び容認する意向である。

IG メタルは、従来現行規定について以下のように批判していた。

同一産業部門の非ストライキ地区の労働者は連邦雇用庁から操短手当を受けないので、 幕ニ所間の運営に密接な関連があって、非ストライキ地区の事業所が操業を停止するような場合には、その地区の労働者を組合の闘争資金で支援せねばならなくなる。だがそのような闘争資金の余裕はないので、組合としてはストライキの波及効果を極力回避せねばならなくなる。だがそれでは、自動車産業のように事業所間に密接な関連がある部門では、実際上ストライキができないことになってしまう。これとは反対に組合がストライキの波及効果を選択し、しかも非ストライキ地区を闘争資金で支援できないときには、組合は操短手当を支給されない労働者の怒りを買い、ストライキ終結の強い圧力を受けることになる。だから立法者は、労働争議に際して使用者側のロックアウトを禁止しないのならば、少なくとも労働者に「冷たいロックアウト」というべき結果を齎す操短手当の支給禁止を廃止すべきである。

社会民主党(SPD)と緑の党の連立合意においても、この争議権条項の改正は取り上げられており、またアンドレス次官は、労働争議に際して労使双方に対等な立場を保証することが連立政権の法改正の趣旨であるとしている。

これに対して、ツビッケルIGメタル会長は全面的に法改正に賛成を表明しているが、使用者側は連邦政府の意向に反対し、使用者連盟(BDA)の賃金問題専門家シュテファン・キュッパー氏は、労働組合の争議行為が公的資金の支援を受けるのは論外であると、厳しく批判している。

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