過去10年で貧困率低下、中位家計所得は僅かに上昇

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

国勢調査局の統計によれば、1998年の中位家計所得はインフレ調整後3.5%伸び、過去3年間で一番の伸びを示し、3万8885ドルと史上最高となった。貧困比率は12.7%に低下し、1979年以来最低水準にある。好景気の恩恵は国内全域に及び、1975年以来初めて全ての地域で顕著な所得水準向上が認められている。

しかし景気拡大のあり方には手放しで喜べない面もある。貧困比率は1973年に比べ1.6ポイント高い水準にある。課税前中位家計所得も1989年よりも1001ドル高いだけで、インフレ調整後の1990年代の1年当り平均上昇額は111.22ドル、あるいは毎年0.3%の上昇に留まっている。意外に低い上昇率だが、9年目に入った好況は期間としては長いが急拡大したのはここ3年間で、インフレ調整すると当初の緩慢な成長の分を埋め合わせるのがやっとというところである。

経済格差については、この10年間の景気拡大の成果は以前の景気拡大時よりも一層、富裕層に偏って分配されている。1998年には最も豊かな5%の家計が総家計所得の21.4%のシェアの所得を得ており、1967年の同17.5%よりも高くなった。最も豊かな20%の家計の総家計所得に占めるシェアも49.2%に達し、経済格差は1980年代と1990年代初頭に急速に拡大したまま1994年以来、歴史的に高い水準に推移している。

失業率は4.2%と低いが、新たな仕事で安定した雇用が約束されるとは限らず、また常勤であるとも限らないため、以前よりも収入が不安定になった労働者も多い。就職の機会については、大学教育を受けたかどうかで給与格差が広がっており、1998年に女性高卒労働者の給与が1.2%上昇に留まった一方で、大学で何らかの教育を受けた女性労働者の給与は5.9%上昇した。

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