東独地域の失業率、西独地域の2倍

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年11月

連邦雇用庁が1999年8月5日に発表した雇用統計によると、7月のドイツの失業者数は前月比で8万9000人増えて402万7000人になり、再び400万人を超え、失業率も6月の10.1%から10.3%に上昇した。前年同月比では、失業者数は10万7300人減少し、失業率は0.4ポイント低下した。

地域別に見ると、西独地域では失業者数は269万1000人で、前月比で3万8600人増加し、前年同月比で12万6200人減少した。失業率は8.6%で、前年同月比で0.5ポイント低下した。東独地域では状況は悪化しており、失業者数は133万5000人で、前年同月比で1万8900人増加、前月比で5万500人増加となった。前年同月比で東独地域の失業者数が増加するのは1998年5月以来であり、失業率も1998年7月と同水準の17.4%を記録した。

ヤゴダ連邦雇用庁長官も言うように、西独地域では比較的状況は改_Pしており、ドイツ全体でも失業者数は前月比では増えたものの、前年同月比では減少している。だが、東独地域では状況は明らかに後退しており、前年同月比での失業者数が1年3カ月ぶりに増加していることのほかに、失業率が西独地域の2倍を超えており、東西の格差が広がった状況が現出している。特に東独地域を州別に見ると、失業率はチューリンゲン州の最低15.1%からザクセン・アンハルト州の最高20.3%に達している。

ハレ経済研究所(IWH)のヒルマー・シュナイダー氏は、東独地域の状況の悪化に対して主に2つの要因を見ている。1つは、訓練職希望の失業者の登録割合が、ちょうどこの夏季において東独地域で西独地域と比べて顕著に高かったからである。だがさらに大きな要因は、統計のうえで失業者数から除外される労働者が労働市場政策によって影響を被ったからである。すなわち国家の積極的労働政策の一環としての雇用創出措置(ABM)等、国家の支援に基づくいわゆる第二労働市場に携わる労働者数が減少したからである。

この第二労働市場を構成する ABM、構造適応措置(SAM)、職業継続教育の3つの代表措置を見ると、7月には前月比で2万3000人減少した。1998年の連邦議会選挙の前に、前コール政権は選挙戦術からも第二労働市場のてこ入れを図ったが、シュレーダー政権が第二労働市場政策の拡大を控えていることが背景にある。したがって1999年初め以来、上述の3つの措置に携わる労働者数は漸次減少してきている。

このような状況の中でIWHは、東独地域の景気の向上による労働市場の改善に期待できない以上、労働市場政策の拡大に消極的なSPDの一部の社会政策専門家の主張と異なり、東独地域における労働市場政策をさらに拡大すべきであるとしている。

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