難航する航空業界の労使交渉

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

アメリカの記事一覧

  • 国別労働トピック:1999年11月

航空業界各社の労使交渉のほとんど全てが課題を抱えている。同業界では1990年代初めに規制緩和の影響で多くの会社が多額の損失を計上したが、その後、各社は業績を大幅に回復した。同業界の各組合は、1990年代の業績不振時に締結された協約で余儀なくされた賃金面での譲歩を埋め合わせるため、今回の交渉では大幅な賃上げを要求する構えである。また、これまでに地域航空会社を買収してパイロットを一時解雇した各社では、経営陣とパイロットとの間に何年間も確執が残っている。この点では、1999年8月31日に地域航空会社リノ航空の営業の統合完了をしたばかりのアメリカン航空での動向が注目される。

USエアウェイズ社(旧US・エア社)

低運賃のメトロ・ジェット部門の開始や整備部門の合理化などを急速に進めた結果、業務上の混乱を招き、業績不振と業界一の高コストに悩むUSエアウェイズ社ではパイロット訓練の遅れや人員不足、整備の遅れなどから多くの便を7月にキャンセルした。このため、乗客の同社に対する不満が高まり、パイロットもスケジュールの混乱に業を煮やしている。

同社の7000人の機械工と清掃人員は4年間の労使交渉をしてきたが、新協約合意に達しない場合に30日の冷却期間を経て9月26日午前0時1分以降、同社に対するストを政府から許可された。機械工の話によれば、同社は6カ所の整備基地のうち3カ所を閉鎖、1400人の労働者を配置転換した。これに加え、いくつかの都市で行われた整備職の人員削減に派生した配置転換も実施された。人員削減と配置転換に不満を抱くIAM(国際機械工組合)が1999年6月に暫定協約を拒否した後、同社はいくつかの再提案をしたが労使合意には至っていない。

1999年9月1日の段階で、協約合意に向けて交渉を続けている他の職種には、初めての協約を締結することになる1万600人の顧客サービス係員、協約合意に達しなければ今秋に順法抗議をすると脅している8300人の客室乗務員がある。

ノースウエスト航空

3年近くの交渉の末に、同社がチームスターズ労組首脳部と1999年6月に合意した暫定5年協約には大幅な賃上げ(5年間で25%増)と年金給付(平均80%増)が盛り込まれたものの、勤続年数の長い客室乗務員が年金額を不満とし、全米各地で活発な反対運動が展開されていた。1999年8月末、同社客室乗務員約1万1000人のうち約9000人が暫定協約に関する投票を行い、69%が反対し批准されなかった。今後、調停人が労使を交渉に戻し、協約締結あるいは仲裁による解決をはかることになるが、これらが不調に終わった場合に、同社で1999年後半にストが起こる可能性が生じている。

アメリカン航空

アメリカン航空ではリノ航空合併を巡るパイロット労組(APA; Allied Pilots Association)との関係悪化が尾を引いている。1998年12月に地域航空会社リノ航空を買収したアメリカン航空に対して、1999年2月にリノ航空合併に反対するパイロットが病気を理由に非公式のストを行い、同社の親会社AMR社に2億ドル(1ドル=105.35円)以上の損害を与え、連邦判事はAPAが職務復帰命令を無視したとしてAPAに4550万ドルの罰金を課していた。

同社とAPAは労使交渉でリノ航空合併によって影響を受けるパイロットの賃金や給付について議論を重ねたが、労組が1990年代初頭に一時解雇されたパイロットの賃金、給付などの計算をする際に、一時解雇期間についても勤続したとみなす_謔、に求めたため1999年8月上旬、同社と協約合意ができなかった。1999年8月16日、同社はAPAと労使交渉を再開したが、交渉中の1999年8月31日に地域航空会社リノ航空の統合が完了し、リノ航空パイロットはアメリカン航空のユニフォームで働くことになり、アメリカン航空パイロットと同等の待遇を受けることになった。同社とAPAは、再訓練、賃金、先任権問題などの多くの問題で一致したが、上に述べた賃金や給付などを計算する際の1990年代初頭の一時解雇期間の扱いや、将来の合併に備えた協定付随書をどのような文言にするかといった点などについて、なお隔たりがある。APAは順法抗議を行わないと約束しているが、合併を快く思っていないパイロットが運航計画を乱す可能性も残されている。

1999年11月 アメリカの記事一覧

関連情報