企業の人員削減つづく

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

タイの記事一覧

  • 国別労働トピック:1999年10月

商業銀行のダウンサイジング

タイの商業銀行は、今まで行員の解雇を避け、人員を維持することで銀行の対面を保持しようとしてきた。政府は、現在50%にも上ると見られている銀行の不良債権の削減に力を入れることを各銀行に指導してはいるが、それによって銀行員の解雇が進むことは望んでいない。

しかしながら、今日の銀行にとって、イメージよりも生き延びることのほうが重要であって余剰人員や支店を抱えている余裕はなく、次々と各銀行で解雇が行われている。

  • タイ銀行
    かつてのバンコク組合銀行従業員2400人のうち、700人しかタイ銀行に勤めることができないため、残りの1700人は労働法に従い、退職手当てを受け取り解雇される予定。
  • サイアム商業銀行
    今年の初めにサイアム・セメントグループSCG)が発表した「1999年相互分離計画mutual separation program)」に1480人の応募があり、予想された1割1万2000人のうち1200人)を超える応募となった。応募者は、早期退職手当ての他に毎年1カ月分の給与が上乗せされる。
  • タイ農民銀行
    1999年の上半期において、1355人の従業員が最大30カ月分の給与相当額の退職手当て総額8億1900万バーツ)と引き換えに辞表を提出した。
  • バンコク銀行
    1999年7月の第1週に24カ月分の給与相当額支給での早期退職者の募集を表明した。1998年バンコク銀行は30カ月分の退職手当で2300人が退職しており、約13億バーツの経費がかかったとされている。同銀行は、従業員が最大だった1994年の2万5000人から比べてもいまだ2万800人の従業員が従事している。
  • ナコンタン銀行
    現在2200人の従業員の雇用が危ぶまれている。
  • スリアユタヤ銀行
    短期目標の退職者1100人のうち800人が応募したにとどまっている。
  • バンコク第1銀行、サイアムシティ銀行
    共に約5500人の従業員を抱え、海外銀行グループに株式売却されるか否かの決断を政府に委ねている。

このように軽く見積もってもタイの銀行業において約20%の労働力が削減される見込みである。今後更なる労働の効率化、支店の閉鎖が続けば、このような傾向はもっと顕著に表れるだろう。

雇用状況の変化

政府の雇用創出の政策とは相反して多くの産業で将来の人件費削減のために人員削減が行われている。

  • サイアム・シティ・セメント
    1999年6月の間に営業、会計、コンピューター、輸送、遠隔地の倉庫経営・営業の各部門において約800人の解雇に踏み切った。退職者は通常の退職手当の2倍額を支給されることで辞表提出に合意した。この退職に関しては、当初予想されたほど労働者との対立は起きなかった。サイアム・シティ・セメントは A本来の業種である製造業と国内と成長しつつある国外でのマーケットに向けたセメント販売に特化することを発表した。
  • シェル
    再度「相互分離計画;mutual separation program)」を開始した。1999年の下半期に早期退職者を募る予定。これらの退職には最大24カ月分の退職手当と、退職後5年以内に死亡した場合給与10カ月分の保険金が支給される生命保険、さらに5年の健康保険が支給される。この人員削減は業績の悪化と、ASEANプラスの再構築計画の両方によるものである。シェルの従業員は現在820人で、まもなく業務用ガス供給、輸送スタッフ、ワールド・ガスの操業を停止する。
  • エッソ
    現在1300人の従業員のうち、30%を削減する計画を打ち出している。最大29カ月分の退職手当で早期自主退職者を募集する予定。1999年6月には調理用ガス部門を、ユニック・ガスに移転、ITEL の操業停止、さらに石油・ガスの海上輸送を子会社化することによって65人が職を失うとされている。また、1999年9月には石油・ガス倉庫の運営と輸送業、155人の従業員をファインモア・ロジスティックス・タイランドに移転させる計画である。
  • タイ石油会社
    パイプライン事業において「相互分離計画」をする予定。退職手当は最大36カ月分の給与額である。

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