AFTAと金製品工業での雇用

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

来年2000年から、金製品が AFTA(ASEAN 自由貿易地域)の対象品目になることに先立ち、専門家たちは金製品産業界の雇用不安を指摘している。なぜなら、AFTAの自由貿易によってマレーシアやインドネシアといった近隣諸国から安い価格の金が流入し、タイの金産業は大きな打撃を受けると見られているためである。金の価格が下落した場合、多くの金専門店が閉鎖に追い込まれ、国内約30万人の金細工師の職が危ぶまれるだろうと予測されている。

金の域内競争力に関して最も大きな要因となると見られているのが7%の付加価値税(VAT)の存在である。またこのVATによってタイの金消費が抑制されているとの見方もある。

タイ金貿易協会では、金は通貨としての性質を持っており、金の取引に課税することは2重の負担になるため、金製品への VAT 免除の申請を政府に申し出たところ何の返答もなかったという。

金の取引において7%のVATを課している国は、AFTA域内ではタイのみである。マレーシアはかつて約10%の課税をしていたが、金取引の促進のために廃止した。

これを受けて、同協会では近々VATの廃止か、もしくは仕入れ値と販売価格の差額にのみ課税する方針を大蔵省に提案する予定である。同協会によれば、金専門店だけでなく、約30万人の金細工師、比較的貧しい層の関連産業従事者を救済するという意味でも、税制の改革が必要だということだ。

過去2年間の経済不況で、金の売上がそれまでの20%ほどに落ち込んだために、7000ある金専門店のうち2000が閉鎖に追い込まれ、440%の金細工師が解雇されたといわれており、このような影響は地方ほど大きく現れているようだ。

タイ国内の金相場は比較的安定しているといわれるが、最も伝統的な財産保有形態であるイエローゴールドの価格は23年ぶりに下落した。

ジッティ金貿易協会会長は、いまこそ金専門店のオーナーは技術と生産を向上させ、独自のブランドを確立し、国内消費よりも海外輸出に目を向ける必要があると述べた。金取引の相手国としては好況に沸くアメリカや日本、ドバイ、中東などで、タイの金製品の良さである、手作業によるデザインとスタイルの柔軟性は、世界市場でも十分通用する水準であると語った。

1998年タイは金の装飾品で約100億バーツ、金貨でさらに100億バーツの収入を得たとされている。

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