改善進まぬ障害者雇用

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

高等労働局によれば、毎年多くの求人があるにもかかわらず、低い教育程度、低い技術水準、通勤の困難さといった要因が、障害者の就職を難しくしているということである。公共衛生省の推定によれば、タイ全土で480万人いる障害者のうち、現在までのところたった5674人の障害者が雇用されているにとどまっている。

法的には、1995年に労働社会福祉省が、200人以上の従業員を抱える企業がある一定の割合の障害者を雇用することを定めた「身体障害者の社会復帰に関する1991条例」を発令した。その雇用数に満たない場合には、身体障害者社会復帰基金にタイの最低賃金である約4万バーツを寄付することが義務付けられた。障害者を雇用している企業に対しては、障害者に払う賃金の2倍額の税金控除を受けられるというインセンティブが与えられた。

しかし、1995年から1998年の間で、約3000人の使用者は年々障害者の雇用数を減らしており、しかも基金には寄付をしていない企業が多いことが明らかになった。1995年の条例では障害者雇用をしていない企業に関しても何の罰則も課せられないからである。

実際使用者側では、障害者を雇用することに対して消極的である。その理由として使用者側は、身体障害者がどんな職種なら作業可能なのか、特別なトイレを設置するためのコストはいくらか、障害者を雇用することで得られる利益は何か、といった情報がほとんど得られないためと回答している。そのため使用者側は労働社会福祉省に対して、障害者の雇用を強制するよりも、更なる障害者雇用に関する情報の提示を求めてはいるが、使用者側は身体障害者を雇用するよりも寄付金を支払う傾向があるという。ちなみに最も障害者の雇用が遅れている分野は公的機関、国営企業、金 Z部門、反対に最も雇用を積極的に進めている分野としては、衣類産業である。

障害者リハビリテーション委員会のスラペ・バシノンタ委員長によれば、もし障害者であっても仕事に必要な技能を持っていれば積極的に障害者を雇いたいという雇用主は増えているという。1995年から1998年の間に1000もの企業が1万人の障害者の雇用に関心を抱いているということが明らかになった。今年に関しては、今までのところ458の企業が2820の職を障害者に提供している。

しかしながらスラペ氏は、障害者のほとんどが必要な教育や技能を持っていないために、企業へ労働力を提供できない状況であることを説明している。障害者が就職できないのは、身体的な障害・低い教育程度・技術水準の低さ・通勤の困難・企業主の消極的な態度という5つの要因があるためという。ちなみに求人募集を行っている業種のほとんどは、6年間の初等教育、少々の英語、パソコンの利用ができることを前提としているが、障害者のための職業訓練校がないこともあり、これらの条件を満たした障害者は非常に少ないのが現状である。

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