科学汚染物質による労働環境の悪化
―ILOリポート

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

タイの記事一覧

  • 国別労働トピック:1999年10月

世界労働機関(ILO)によれば、タイは経済回復の兆しが見えてきたにもかかわらず、労働者は労働環境の悪化によって不利な影響を受けていることが明らかにされた。

ILOは"Program of action for occupational safety and health in Thailand forwards 21st century"のなかで、工業部門に従事する多くの労働者が、作業中に危険な科学物質にさらされており、健康や安全に関する情報へのアクセスを持っていないことを取り上げた。なかでも、福祉や労働保護の基準を満たすための経済者的余裕のない小規模な企業にこのような現象が見られるとしている。

このような背景には、使用者側がここ数年の経済困難から経営コストを削減するために、労働者の安全装置への投資を抑制せざるを得ないという状況がある。その結果、労働者は危険な化学物質にさらされながら作業に従事しているという。

他にもこのレポートの中で、労働保障基金の非効率な運営、医療スタッフの不足、職業病患者の無視といった問題が浮き彫りにされた。さらに、労働政策の実施と法律の強制力の問題、労使の不協調から生まれる問題解決の非効率性も指摘している。

まとめとしてILOは、タイでの労働保障基金の建て直しを提案し、労働者の健康と安全を促進するための一層の努力を政府に求めた。

これを受けて、ジョンチャイ・ティエンタン労働省次官は、労働保障基金がすべての労働者にきちんと利益が行き渡っているかどうかを確認したい、と語った。

近年、タイでは地下水汚染が進み、それを飲料水として飲んだ人々が慢性砒素中毒になるケースが問題になっており、科学汚染物質の処理に関する方策が早急に求められているといえよう。

1999年10月 タイの記事一覧

関連情報