セーフティーネット資金の乱用問題

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

1998/1999年度「ソーシャル・セーフティーネット・プログラム」(JPS)(本誌1999年4月号参照)の約18兆ルピアの資金のうち、8兆ルピアにも上る使途不明金や不正使用・不正流用が出たことが発覚した。

JPS 構想は経済危機の発生によって生じた社会・経済的な歪みを速やかに解決することを目的に作られ、政治・経済的安定と社会的な安定を目指している。プログラムの資金は主に世界銀行からの融資、CG(Iインドネシア支援国会議)、アジア開発銀行(ADB)、ユニセフ、日本からの融資(宮沢構想資金)からなっている。

この資金は多額なものだけに、総選挙の際に党の活動資金に用いられたり、公務員、特に地方官吏が親類や地域の事業家に供与または貸付を行ったりするというような「不正流用」から、同じプログラムが重複して行われたり、最貧困層ではなくそれより少し豊かな人々が支援を受けたなどの「政策上の不備」まで様々な問題が指摘されている。

資金の使い道に関しては、1999年の4月頃より世界のNGO団体から疑問の声が上がっていた。1999年6月にはインドネシアの女性団体が、世界銀行に資金の使途を明らかにするよう要請、世銀は6月下旬までに回答するとの約束であったが、未だに回答はない。女性団体の代表は、本来借款の恩恵を第一に受けるべき市民が、その使途に関して監視の機会を剥奪されている、と主張した。

また、ガジャマダ大学経済学部のムブヤト教授は、政府は一切のシーシャル・セーフティーネット・プログラムを停止すべきだと訴えている。1999/2000年度国家予算では約6兆ルピアが計上されることになっているが、ムブヤト教授は、これを「間違った注射」と批判。IDT(least developed villages)や地方の貧困削減を目的とした以前のプロジェクトでは貧しい人々を救済することはできなかったことを指摘、今回のセーフティーネットも経済危機のために貧しくなった人々のみを対象としていることが問題だという。彼は、今後NGOとの連携でプログラムを推進していくことを提案しているが、もしそれが不可能ならば、行わないほうがよいと述べている。そして、より長期的な貧困削減目標を掲げたプログラムを行うべきとしている。

NGO団体も、このソーシャル・セーフティーネット・プログラムは計画の不充分さと政策の問題だけでなく、単なるチャリティーとして行われていることを批判している。

国家開発企画庁(BAPPENAS)による緊急支援プログラム(PDMDKE)に関しても、農村回復委員会(Village Resilience Boards:LKMDs)の重役2名と、中央ジャカルタと東ジャカルタの役員2名が約30億ルピアの資金を乱用していたことが明らかになった。

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