バスドライバーのストライキとバス料金値上げの動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

ジャカルタ市内を走る国営バス企業PPDのバス運転手と車掌が集まり、月給の120%引き上げを求めてストライキを起こした。運転手達は、従業員の福祉の向上と会社の腐敗の撤廃を求め、ギリ運輸相とジャカルタ市内の省官邸で交渉を行った。このストライキによってジャカルタ市内のバス運行は数日間停止になった。

その結果、PPD従業員の福利厚生の向上と操業サービスの向上のために、運輸省はPPDに20億ルピアを支援すると発表し、この資金は従業員の要求する120%の給与引き上げと、バスの修理費用に当てられる予定であることを明らかにした。運輸省は、PPD労働者の賃上げを認める代わりに、企業の更なる経営の効率化と内部の「汚職・癒着・縁故」(KKN)の撤廃を求めている。1998年も、運輸省はPPDに対して、貧しいバスの運転手と車掌の救済のために420億ルピア(=約550万米ドル)の補助金を支給したが、企業側が資金の使い道について明確な説明をしてこなかった。腐敗したPPDが政府からの資金を横領しているとの噂もあり、企業側は経営に大きな損失をもたらしていると思われるKKNを徹底的に追求しなくてはならないだろうとしている。

そのようななかで、市の行政局は1999年7月23日からバス料金を100%値上げに踏み切ると発表した。通常のエアコンなしのバス料金が300ルピア(=米4セント)から600ルピアへ引き上げられる。

これに対し、インドネシア交通労働者組合(SPTI)は、この値上げはバスの運転手の利益になるのではなく、バスの所有者がレンタル料金を上昇させる口実として使われ、結局運転手の所得向上には繋がらないと、反対の意を表明している。

一般市民の反応としては、タンゲラン地域では平均日給が2万5000ルピアから5万ルピアであるのに、交通費が倍になることは大きな痛手であると反対している。バスの運転手も、今は多くの人が経済危機で苦しいときであるから、値上げする時期ではないとし、運賃の値上げによって、商品の価格があがり、更に生活が苦しくなるだろうと予想している。そして、もし料金が値上げされるならば、ストライキも辞さない構えであると語った。

経済危機後の自動車スペア部品の価格高騰をうけ、1999年の初めに政府は560億ルピアのソフトローンを交通産業に割り当てた。しかし、そのローンを本来の目的に使用せず、企業が私腹を肥やしているとの噂があり、市の行政側がバスのスペア部品の価格を値下げしない限り、また交通産業の重役が、中央政府のソフトローンを適切(スペア部品の購入のため)に使用しない限り、バス料金は値上げされるべきではないとの声が強い。

このような反対の動きから、バスを利用するのはジャカルタの一般市民であり、料金が2倍になることは好ましくないと判断し、市の行政局は当初見込んでいた100%の値上げを66%まで引き下げると発表した。

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