経済回復に自信過剰は禁物
―IMFのマクロ経済予測を受けて

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

総選挙の終了を受けて、安定を取り戻しつつあるインドネシアの次なる課題の一つに経済成長が挙げられるだろう。そのようななかで、各機関から様々な経済・社会指標が発表された。

IMFは2000年3月までのインドネシアの経済成長率を1.5~2.5%のプラスと楽観的に予測した。一方、世界銀行では、1999年度の第2四半期の経済成長率は1.82%で着実な動きを見せているものの、GDP はまだ不安定であり予断を許さないとしている。

この IMFの予測に対し、インドネシア国内の経済学者が楽観的過ぎると批判している。確かに、総選挙が無事に終了したことから市場動向が改善してきてはいるけれども、金融部門の多量の不良債権問題や政治の腐敗など課題は山積みであって、自信過剰になってはならないと警告している。

1997年の経済危機でインドネシアは、実質賃金は平均約30~35%下落し、インフレ率は最高時には77%、利子率も70%以上も上昇、ルピアも1米ドル1万7000ルピアまで下落するという大変な経済混乱に陥った。

しかし、現在では、インフレ率、利子率ともに適正な水準で安定しており、1米ドル7000ルピア以下の水準で安定してきている。中央統計局によると1999年7月のインフレ率は前月比マイナス1.05%に下がり、1998年の7月に比べると13.49%の下落となっている。食料品の価格も1999年6月から7月で3.46%下がった。例えば、香辛料の価格は17.04%ダウンしたのに対して、必需品である米の価格は0.22%下がったにとどまった。加工食品、飲料、タバコの価格はさほど変わらず0.13%ダウンとなっている。

貿易面では、輸出・輸入額とも減少、輸出の減退は、主な貿易相手国である日本の経済状況が思わしくないためである。

さらに気がかりなのは消費の伸びが未だマイナスであることで、これは低い賃金と失業率の高さに原因があるのではないかと考えられている。具体的な消費刺激策としては、支援が消費に直接結びついている貧困層に支援をすることが効果的と見られ、「ソーシャル・セーフティネット」資金として、世銀が1999年8月末までに3億ドル、2000年3月までには計6億ドルの支援をすることが決定している。

国連開発計画(UNDP)では、1999年度版Human Development Reportのなかで、HDI:人間開発指数(Human Development Index)を発表し、インドネシアは世界105位であった。

注・HDI とは、基本的な人間の能力が平均どこまで伸びたかを測るもので、平均寿命、教育水準(成人識字率と就学率)、国民所得を用いて算出している。

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