ムンバイ港1999年度は4億ルピーの赤字に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JILが作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

インド最大港のムンバイ(旧名ボンベイ)港湾トラストにとって3万2000人の労働者の増加し続ける人件費の負担は大きな重荷となり、経営者側の発表によると1999年度は港湾史上初の赤字が見込まれている。

人件費の増加と不景気による輸送量の減少により、港湾の純益は、1997年度の15.493億ルピーから、1998年度8.079億ルピーになり、1999年度には4.039億ルピーの赤字になると予想されている。

主な原因は、港湾経営における支出の65~70%を占める人件費であり、1998年1月1日からの賃金改定により更なる費用負担が加わったことも経営に影響した。

港湾労働者の70%がムンバイ、カルカッタ、チェンナイの三大港で働いているが、ムンバイ港は、取扱量が国全体の13%にもかかわらず、労働者数では全国の主要な港湾労働者の30%を占める。

国はそれぞれの港湾で、任意退職計画(VRS)の実行を義務づけその効果を期待していたが、早期退職計画の対象となる要員が少なかった。また、1992年ムンバイ港は、2000人の労働者が特別任意退職制度に応じたが、それに対し国家復興基金からの援助がなかったことも影響している。各港湾は、任意退職制度の全体像を描いていないし、新人員計画の採用によりどれくらいの過剰人員が実際予想されるかを見定めた任意退職制度全体計画も立てていない。

このため1999年5月18日、ムンバイ港湾トラストは、労働者のための包括的任意退職制度作成委員会を設立し、港湾の様々な部門の労働者を詳細に調査し、過剰な人員を確定し人員計画を作成することとした。なお、マゴ理事長は、「幹部はだれも参加できない」と述べた。一方、労働者側も、経営者側が提案する任意退職制度の法制を研究するために、独自に委員会を設けた。

次に減少する収入と輸送量を見てみると、ムンバイ港は、1998年度収入76.4億ルピー、支出68.3億ルピー、1999年度は、収入75.2億ルピーに、支出79.2億ルピーが見込まれている。収入の減少は主に輸送量の減少によるが、1995年度3405万トンが1998年には3095万トンに減少した。この総輸送量の減少は石油の輸送が1995年度2052万トンから1998年度1667万トンに減少したことが影響している。

この貨物量の減少は、経営者に人件費の負担を一層憂慮させ、マゴ理事長は「来年はもっと厳しくなる」と述べた。ムンバイ港は1999年度に3100万トンの輸送量を目標にしている。また、赤字を処理するために関税を改定することも考えられたが、その余地は限られており、今後の焦点は経費削減になるとマゴ理事長は付け加えた。

他の多くの主要港のように、民間の港湾利用に関する計画があまりに無定見だったことも経営悪化の理由になっている。2つのコンテナ基地と2つの一般貨物基地の貸し出しと20年間の停泊使用等があるが、民間利用者は既存の労働者を使い、港湾のレートで賃金を支払わなければならない。

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