組合加入者数の減少とパートナーシップの行方

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

政府が1999年7月に発表した公式統計によれば、労働組合の加入者数は引き続き減少している。とくに民間部門が顕著で、組織率はわずか19%にとどまる。新しい職場で新規加入者を募るのが極めて困難になっているようだ。加入者数の動向については、1998年に18年ぶりに下げ止まったと労働組合会議(TUC)が1999年5月に発表したばかりであった(本誌1999年7月号参照)。

統計によれば、1998年秋までの1年間の加入者数は0.6%(1万人)減少した。この減少幅は1989年以来最小ではあるが、総加入者数は780万人、組織率は30%にまで落ち込んだ。ピーク時の1979年には1330万人が加入していた。

組織率の低さが特に目立つのは民間の成長部門で、例えば、ホテル・レストラン業で5%、不動産で8%、卸売り・小売りで11%、建設で14%などとなっている。また従業員25人未満の比較的小規模の職場の組織率も低く、民間・公共あわせて15%、民間に限ると8%ときわめて低い。

こうした結果を受け、元労働党書記長で現在公共部門労組(UNISON)の副書記長のトム・ソーヤ氏は、21世紀に労働組合運動が影響力を保持できるかは、実業界・政府との間に同盟を築くことができるかにかかっていると論評している。

実際こうした動きは、労使間のパートナーシップ協約という形で現れ始めている。例えば、韓国のエレクトロニクス企業、LGエレクトロニクスと合同機械・電気工組合(AEEU)は1999年7月16日、南ウエールズ工場の全従業員1800人をカヴァーする、国内で最大規模のパートナーシップ協約に調印した(LGが韓国外で組合を承認したのはこれが初めて)。協約は労使双方に対し、株主の利益と従業員の生活水準の向上、会社の発展に努めることを求めており、AEEUのケン・ジャクソン書記長は、パートナーシップこそ会社と組合の双方が発展するための唯一の道だとコメントしている。

その一方で、英国産業連盟(CBI)のクライヴ・トムソン会長は労使間パートナーシップには否定的だ。同会長は良好な職場関係は組合がなくても築けるとし、むしろパートナーシップは、強力な組合を復活させようとする動きの隠れ蓑に過ぎないと厳しく批判している。

政府も同様で、組合および使用者との間にナショナル・パートナーシップを築く意志がないことを非公式に認めている。やはり組合が再び力をつけるのを警戒しているためだ。

1999年5月の TUC 大会での演説でブレア首相は、労使間のパートナーシップに立脚したニュー・ユニオニズムを支持すると表明したが、その際にも、それが20年前の敵対的な組合運動を復活させるのに利用されてはならないと厳しく警告していた。パートナーシップは会社事業の成功に労使が協力するための契約であって、トム・ソーヤ副書記長の言うような、組合運動を存続させるうえでの決定打とはならない、というのが大方の見方だ。

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