「雇用のための同盟」第3回会談をめぐる動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

「雇用のための同盟」の第3回会談が1999年7月6日シュレーダー首相の主催で開催された。過去2回の会談では、作業部会に具体的政策の検討を委ね、協力態勢の構築と同盟の大枠作りに重点をおき、具体的には目立った成果を挙げるまでに至らなかったが、今回は訓練職の数値目標の合意も含めて成果が具体化され、政労使3者ともその意義を認め、前進のための新たな一歩と評価している。

1999年7月6日夜の政労使の合意内容には、法人税改革、年金改革、高齢者パートタイムの改善、東独地域の復興、賃金政策、訓練職の確保等が盛り込まれた。労使間では、フント使用者連盟(BDA)会長とシュルテ労働総同盟(DGB)会長が合意文書を発表し、将来「雇用のための同盟」の場で雇用促進のための賃金政策を取り上げること、雇用確保のために超過(時間外)労働を削減していくこと、また、使用者団体側が訓練職の十分な増加に積極的に努力することを表明したが、これは政府、各使用 メ団体ならびに各労組のいずれの側からも積極的に評価された。ただし野党(CDU)は、その実効性に疑問を呈している。

賃金政策について、BDA と DGB は合意文書で次のように表明している。

財政、金融、社会政策の分野だけでなく、賃金政策においても雇用の促進との関連付けがなされねばならず、失業を持続的に低下させて行くためには、中・長期的に信頼しうる賃金政策が不可欠である。生産性の向上は雇用促進に優先的に役立てられねばならず、それには業績に見合った給与も考慮されねばならない。また、産業別労働協約を基礎としながらも、事業所レベルでの企業の業績の差異にもっと考慮が払われねばならず、協約の取り決めを補完する可能性、開放条項の活用等を拡張すべきである。

これは、賃金政策は協約自治の範囲の問題で、「雇用のための同盟」で取り上げるテーマとしてはなじまないとしていた、IG メタルを中心とする従来の労働側の姿勢からは一歩前進で、フント、シュルテ両会長も、賃金政策を「雇用のための同盟」のタブーとすることの終結と位置付け、シュレーダー首相も高く評価している。

訓練職については、BDA と DGB の合意文書を受け、政労使の合意内容に次のように具体化されている。

訓練志望の能力と意欲のあるすべての若者に訓練職を確保することが目標である。そのために、1999年9月30日までに公共職業安定所で仲介されなかった訓練職志望者に対して、その希望する職種の訓練関係を、地域的事情に応じて可能な限り住所地の近くで提供する。また1999年10月以降毎年、公共職業安定所等の管轄区域で、労働行政担当者、使用者団体、労組等の参加する地区レベルの訓練職関係会議を開く。また使用者団体は、1999年度は、人口統計をもとに計算された事業所で確保されるべき訓練職を創出するほか、少なくともさらに1万の訓練職を創出し、2000年以降は、少なくともその年々の人口統計をもとに計算された訓練職を創出する努力をしていく。この他、情報通信技術分野での専門職の不足と立ち遅れを取り戻すために、3年以内にこの分野で4万の訓練職を創出し、2005年までにこの分野の雇用を15万人増加させる目標も掲げている。

このように過去2回よりもかなり具体的な成果をあげた第3回会談を受けて、IG メタルが早速金属連盟に働きかけ、同連盟と同労組の間で超過(時間外)労働の削減等についての交渉を実施に移すことが提起されており、この第3回会談を踏まえた今後の労使の交渉の行方が注目される。

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