UAWのダイムラー・クライスラー社における組織化努力

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

自動車製造業ダイムラー・クライスラー社の南部アラバマ州ヴァンスのメルセデス・ベンツ工場で、全米自動車労組(UAW)が行っている従業員1200人の組織化が注目を集めている。独ダイムラー・ベンツと米クライスラーの合併によって誕生した同社は経営上の重要決定を監査役会に諮るドイツ型の企業統治をとり、UAW から監査役が派遣されている。1999年7月8日、同社監査役でもあるヨーキチ UAW 委員長がシュレンプ共同最高経営責任者に会い、ダイムラー・クライスラー社がヴァンスでの組合組織化を密かに妨害するための資金提供をしていると主張、1999年9月14日に3大自動車会社の労働協約の期限が切れた後にダイムラー・クライスラー社の従業員7万6000人の全国規模のストも辞さないとした。これについて同社首脳部は何も発言していないが、同社はこの問題を真剣に受け止めている。これまで同社は組織化に中立を保つとしており、平穏に組織化活動がされると考えられていた。ヴァンスでの組織化は UAW の組合組織化努力の一環で、ジェネラル・モータース(GM)社やフォード社にも関係がないわけではない。1999年の労使交渉で UAW は団結権を交渉事項の1つにしようとしている。その主要目標は自動車部品工場の40万人の労働者の組織化にあり、自動車会社が部品製造業者に対して組合員勧誘を妨害しないように命令するよう求める予定である。

UAW は多額の資金を投入してヴァンス工場での組合組織化を試み、1マイル以内の距離に組織化事務所を設けている。しかし従業員の中には組合に反対する者もある。反対派は、労働者の50%以上が UAW を団体交渉代表に希望するという授権カード(authorization card)を集めた際に使用者が組合を承認する「チェック・カード方式」ではなく、通常の全国労働関係局(NLRB)による選挙を望んでいる。通常の選挙では、30%以上の労働者が授権カードに署名すると NLRB に選挙開催を依頼する。選挙が近づくと組合支持が低下することが多 「ため、わざわざ労組に有利なチェック・カード方式で組合を支持する使用者は少ない。しかしヴァンスでは同社が組織化に中立を宣言しているため、組合反対派従業員はシュレンプ共同経営責任者に書状を送り、通常の選挙を選択するよう求めている。組合支持派は現在、162人が授権カードに署名したとしているが、署名したカードを返して欲しいと頼んだ従業員もいるため、現実に何人が組合支持にまわっているか正確にはわからない。

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