製造業最大手が相次ぎ大規模人員削減

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年9月

転職斡旋会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると1999年上半期に発表された一時解雇の合計は38万3548人で前年同期比42%増となった。もし、この趨勢が続くならば、昨年の68万人(1990年代最高)を超えることになる。しかし失業率が4.3%と低いため、転職者の93%は、報酬が現状維持あるいは増加している。1990年代初頭に始まった大企業の雇用縮小は今でも続いている。しかし合衆国の好景気を反映して、多国籍企業が発表する一時解雇が海外で行われることが多くなっている。

日用品最大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社は6月9日、2004年6月までに世界各地で総従業員の13%にあたる1万5000人を削減し、10工場を閉鎖する計画を公表した。2001年までに1万人を削減する。1万5000人の29%が北米で、13%がアジアで、42%がヨーロッパ・中東・アフリカで、16%がラテンアメリカでの人員削減となる。

同社は迅速な新製品開発、生産工程の合理化と生産設備の標準化、そして製品分野別の7営業組織新設を内容とする事業再構築を計画中で、向こう5年間の各年1株当り利益を13%から15%に高め、毎年6%から8%の収入増を目指す。今回の事業再構築は、2005年までに売上を倍増させ700億ドルにするとした、同社の1995年の10年計画の頓挫を暗に示す。証券アナリストの間では、最近の業績、殊に新製品開発の停滞から見て今回示された業績回復見込みも強気にすぎるという見方が主流である。同社は東南アジア、ラテンアメリカ、冷戦終結後のロシアなどに莫大な投資をしたが、これらの地域が1997年、1998年に経済混乱に陥り、見込み違いに終わった。

P&G社は1993年にも1万3000人を削減して非ブランド品に対する価格競争力の維持に努めたが、今回の事業再構築には全く違った狙いがあり、技術革新により高い価格でも販売可能な製品を開発し、これまでに培った国際的販売網に乗せることに主眼がある。オランダ生まれのジャガー最高経営責任者(CEO)の改革を阻む最大の障害は、同社の社風と考えられている。同社従業員は長年にわたり、ルールに従いリスクを避けていれば終身雇用を会社に期待することができた。しかしジャガ・CEOはリストラに積極的で、リストラ後は解雇されない従業員にとって仕事のしやすい職場になろうと述べている。

化学最大手デュポン社は6月7日、ポリエステル事業部門の従業員の14%にあたる1400人を削減すると発表した。800人がデュポン社員の削減で、600人が契約社員の削減である。人員削減の約80%は北米で行われる。直接の原因はポリエステル市場への東南アジア諸国の参入と需要低迷による価格低下である。その上、同社がインペリアル・ケミカル・インダストリーズ社のポリエステル部門を12億ドルで買収した2年前とほぼ同時期にポリエステル価格の低迷が始まったという戦略の大失策があった。

航空・防衛業の二大企業ボーイング社とロッキード・マーチン社は1990年代初めから企業合併・買収で急激に巨大化したが、高コストや生産現場の諸問題に悩んでいる。最近では株価も低迷し、防衛産業の競争力の維持を願う国防総省の意向もあって、両社とも10億ドルを超える大幅な事業資産の売却を迫られている。ロッキード・マーチン社は空軍の次世代戦闘機F-22と軍用輸送機C-130Jなどを製造するジョージア州マリエッタ工場従業員の約20%にあたる2000人を削減すると発表した。このうちの40%は退職、配置転換、自然減による削減とされる。一方、ボーイング社では現在、すでに発表された4万8000人の一時解雇が進行中である。

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