教育部門で争議続発の恐れ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年8月

教職員労組が政府の賃金政策への対抗手段をとるための投票を実施した。今夏、教育部門で争議が続発するおそれがあり、政府は対応に追われることになりそうだ。

政府は初等・中等教育部門において教員の賃金を生徒の成績にリンクさせる実績評価給(performance-related pay)を推進する計画を持っており、その前段階として評価システムを向こう12カ月の間に校長らに導入させようとしている。こうした動きに対し、英国最大の教員労組、全国教員組合(NUT)はこれを阻止するための争議行為の是非を投票で確認、投票者の96%が賛成票を投じた。マクアヴォイ同書記長によると、争議行為は6月3日に始まり、政府が導入を断念するまで続けられるという。

新しい評価システムでは、各学校は学習の進展状況について個々の教員と議論し、生徒の成績を含めた目標を定めることなどが含まれる。政府は、こうした評価システムにリンクした実績評価給を2000年の9月から導入したい意向だ。

一方、高等教育部門では、大学教員組合(AUT)に加盟している、伝統的な大学の教員が賃上げ率をめぐって争議を予定している。争議が実行されれば、夏の学位授与と秋の新入生受け入れに支障をきたすおそれがある。

過去20年の間に大学教員と他の専門職の賃金格差は30%に開き、教員らはこれを縮小する第一歩として10%の賃上げを要求しているが、大学側の提示は3.5%。一般に博士号と数年の研究歴を有する専任講師の場合、初任給は1万7000ポンド前後であるが、研究スタッフはわずか1万ポンドの場合もある。大学側は相対的な賃金低下を認めているが、大幅な賃上げをする資金が不足していると主張している。しかし、トライズマン AUT 書記長は、施設の新設や学長の昇給(過去3年間で平均7%)など、現に追加的な資金が使用されていると指摘する。

4万2000人もの加盟者のいる AUT が実施した投票では、58%がストライキを支持し、70%が他の争議行為を支持した。AUT は5月25日に24時間ストを予定しており、これを皮切りに6月に試験のボイコット(4日間)、8月に新入生受け入れ手続きのボイコット(4日間)などを展開するという。

また新設大学の教員を代表する全国高等教育教員協会(NATFHE)も、賃上げ率が3.5%を上回らなければ争議行為に加わると表明している。試験の監督・採点の拒否などの争議行為を展開する予定だという。新入生受け入れ手続きのボイコットにより、何万人もの高卒者が大学に入学できるのか分からない状況に置かれるおそれがある。

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