サービス業労組結成に対し、有力産別労組が連帯の合意

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年8月

ドイツでも第3次産業における発展等の産業構造の転換の中で、現業労働者に対する職員の増加傾向があり、この大きな流れの中で労働組合の再編の動きがある。中でも2000年には公務・運輸・交通労組(OTV)、商業・銀行・保険労組(HBV)、印刷労組、郵便労組、ドイツ職員労組(DAG)がサービス業労組(Verdi)の巨大労組を結成する予定である。

ドイツ労働総同盟(DGB)傘下の従来の産業別労働組合は、この動きを基本的には歓迎しながらも、既存の産別労組の管轄領域に対するサービス業労組 Verdi の侵入に対する警戒感を示し、さらには使用者側の労働協約離れの戦略に対抗することも視野におき、連帯して協力する動きを示してきたと言える。つまりこれは、産別労組として労働側内部の競争と外部における企業の戦略の双方に対処する動きである。

このような状況のもとで、IG メタル、鉱山・化学・エネルギー労組(IG BCE)、建設・農業・環境労組(IG Bau)、食料・飲食・レストラン労組、鉄道労組は、「各産業部門傘下のサービス業に関する計画」(PID 計画と以下略称する)の名のもとに協力体勢を敷く合意を行い、ペータース IG メタル副委員長が中心となって、5月26日にボンで記者団に大略以下の内容の趣旨説明を行った。

まず、労働側内部の調整としては、Verdi の規約作成の際にその管轄権の範囲を明確に定義して、DGB 連邦幹部会会議の3分の2の多数の議決でそれを承認しなければならない。この手続きを通して、産別労組の既存の管轄領域、特に各産別労組傘下のサービス業が侵犯を受けないように厳重に監視すべきである。中でも産別労組として特に警戒するのは、従来 DGB 傘下になかった DAG が DGB 傘下に加わる Verdi に統合されることである。DAG には個別産業部門に所属する職員が組織されており、その職員のために従来 DAG が産別労組と並行して協約賃金交渉を遂行してきた。そこで DAG が Verdi には統合された場合には、「一事業所(企業)、一労組」の原則が貫徹されねばならず、それぞれの企業における労組の利益代表は、明確な管轄権を有する産別労組の手に統一されねばならない。

次に企業戦略に対抗するためには、子会社設立、産業部門の転換、企業の一部売却、合併、新規設立等により多くの事業所が成立するときに、従来の産別労組の管轄が及ばなくなり、もしくは産別労組間の管轄相互の関係に争いが生じるような事態に対処して行かねばならない。例えば、自動車製造企業は金属産業に属し、協約交渉は職種別ではなく企業全体を基準とするから、協約の交渉相手は IG メタルである。しかし、企業側は食堂営業部門を切り離して子会社を作り、この独立の子会社を食品産業部門に位置付け、食料・飲食・レストラン労組の管轄領域として協約交渉を行い、賃金コストの削減を図ろうとする(食品産業の労働者の賃金は、金属産業の労働者の賃金よりもはるかに低い)。このような事態に対処するために、産別労組としては上記の PID 計画のもとに協力して協約交渉に連帯して当り、管轄権を一つの産別労組に統一すべきである。

以上のような趣旨説明からも、このような産別労組間の協力をめぐる動きは、DGB 傘下の労組再編や企業の労働協約離れの動きとの関連で、今後とも注目に値する。

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