研究所共同調査、産業別労働協約離れを確認

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年8月

5月の初めに明らかになった労働市場職業研究所(IAB)と企業寄りのドイツ経済研究所(IW)の共同調査結果から、産業別労働協約の拘束を受ける事業所、被雇用者数の減少傾向が改めて確認された。この調査は9000を超える西独地域と東独地域の事業所に関して毎年行われるパネル調査に基づいており、両研究所によると、調査結果は200万を超える全ドイツ事業所の傾向を表すという。また、これは1月に明らかにされた IAB の単独調査に続くもので、特に新規設立企業の協約離れ傾向が指摘されている。

調査は1995年と1998年の比較(東独地域では1996年と1998年)で、それによると、西独地域では1998年に協約に拘束される事業所数は約48%で、ほぼ6ポイント減少しており、東独地域では約4分の1で、ほぼ2ポイント減少している。また、1998年に締結された企業協約は、西独地域で約5%、東独地域では7.6%で、協約に何ら拘束を受けない企業数は西独地域で47.5%、東独地域では約3分の2に達している。これらの数字は企業の協約離れ傾向を示していると、両研究所は言っている。

被雇用者が協約に拘束される割合は、事業所の場合よりも高い割合を示している。それでも、1998年に西独地域では67.8%、東独地域では50.5%の被雇用者しか協約の拘束を受けておらず、これは西独地域では1995年の72.2%から約4.5ポイントの減少、東独地域では1996年の56.2%から約6ポイントの減少で、やはり減少傾向が伺われる。しかも、ここでは事業所の場合と比べて、減少の割合は西独地域よりも東独地域が高くなっている。

注目されるのは、1992年以降に設立された西独地域の事業所では39.9%しか協約の拘束を受けていないことであり、これはそれ以前に設立された同地域の事業所が協約に拘束される割合を大きく下回っている。調査結果によると、事業所規模では、一般に中小企業の方が大企業よりも協約の拘束を受ける割合が低いと言えるのに対し、このような新規設立企業(事業所)が古い企業(事業所)に比べて協約に拘束される割合が低いという傾向は、企業規模の大小を問わない一般的な傾向だとされる。

金属業界を皮切りに、今年の協約賃金が高めの水準で妥結されており、使用者側から従来の労働協約運用の慣行や賃上げ交渉の手法に疑問が呈され、企業の協約離れを意図する発言が目立っている。この共同調査結果は、このような傾向をある程度裏付けるものと言えよう。

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