銀行業退職金問題、依然解決せず

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

インドネシアの記事一覧

  • 国別労働トピック:1999年7月

1999年4月23日、政府は2合弁銀行を閉鎖、ニアガ(Niaga)銀行の経営を引き継いだ。このうち、2合弁銀行は4月21日の締め切り日までに、資本注入によって自己資本比率を4%まで上げなかったため閉鎖された。他方、ニアガ銀行は、当初、再資本注入計画の対象になっていた。同行は、国内の民間行なので自己資本比率を4%にするために必要な資本注入の80%を政府から受けることができる。しかし、同銀行の経営者は残りの20%を調達できなかった。3月13日に再資本注入計画の対象になった9行のうち、ニアガ銀行以外の8行は必要な資本を調達した。その中には、イギリスのスタンダード・チャータード銀行から5600万米ドルを調達したバリ銀行が含まれており、銀行再資本注入計画に初めて外資が応じたものとして注目されている。しかし、1999年1月以来、金利の逆ザヤ(銀行の借り入れ金利が貸し出し金利より高い状態)が生じていることから、銀行の資本金が減少している。そのため、8行が自己資本比率4%を維持するために、最終的に必要な資金調達金額はさらに増加すると考えられている。

国営銀行の焦げ付き融資の半分以上にあたる60兆ルピアは、政府に縁故関係のある20大債務者向けに行われた。この巨額融資の返済が行われる目途が立てば、銀行改革に大きなはずみがつくことになる。逆に、この資金返済が実行されなければ、金利の逆ざやが解消しないため、銀行経営が圧迫された状態が続く。政府は4月30日までに、これらの20大債務者の返済計画を組み直すことをIMFに約束していたが、この期限を守ることができなかった。しかし、政府は依然として返済計画を策定する予定で、IMFの寛大な対応を期待している。さらに4月30日、バンバン・スビアント大蔵大臣は、政府が悪質な銀行員と債務者に対し、法的責任を追及すると語った。

一連の銀行改革の中で解雇された銀行員は、法律で定められた退職金の10倍を要求している。これに対しBisnis Indonesia紙は、もし政府や銀行が彼らの要求に屈するならば、他の産業からの解雇者も同様な金額を要求することになるため、悪い前例を作ってしまうと論じ、元銀行員が他の銀行で職を得たり、他の産業で就職できるように心がけるべきだとしている。しかし、本誌先月号に紹介したジャカルタ・ポスト紙社説が指摘するように、銀行員の多くは大卒で、銀行社主の腐敗を追及する際に鍵となる情報を知っていることから特別な存在である。したがって、銀行員の退職金要求の行方が他の産業の一般労働者の退職金要求額に対し、どれだけ影響を持つかは必ずしも明らかではない。

1999年3月に政府によって閉鎖された38銀行の元従業員1万7000人の大部分は、他の仕事に就くことにほとんど関心を示していない。4月5日から4月8日まで銀行再建庁(IBRA)は、元銀行員を対象にしたフォーラムを南ジャカルタで開催したが、1万7000人の元従業員のうち約100人しか姿を見せなかった。このフォーラムには閉鎖された銀行の元従業員に職や投資機会を提供する多くの会社が参加した。

元銀行従業員によると、同フォーラムで紹介された職のほとんどは、非常に奇妙で魅力的なものではなかった。例えば農事産業の職に就くために50万ルピアの資金を要求されたり、多くの保険会社が、これまで固定給で働いてきた銀行員に対して歩合制の仕事を提供したりした。IBRA のフランクリン執行委員は、元従業員が退職金を求めて抗議集会にうつつをぬかすのではなく、固定給にこだわらず高い給料が得られる保険会社のような職も考慮すべきだと述べている。

1999年7月 インドネシアの記事一覧

関連情報