退職年金制度の未来に関する報告書を首相へ提出

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

8カ月の作業を終えた行政計画本部のジャン=ミシェル・シャルパン委員長は4月29日、退職年金の未来に関する報告書をジョスパン首相へ提出した。首相は直ちにコミュニケの中で、労使当事者との新たな協議の局面に入ったことを発表した。

退職年金などのデリケートなテーマの場合、2段階の協議プロセスが必要だ。第1段階では、退職年金制度の未来の診断について労使当事者の意見を聞かなければならない。そして、第2段階では、改革の方法とその道筋について検討する必要がある。シャルパン報告書がジョスパン首相に提出されたことで、4月29日に第1段階は終了した。首相は、年末まで続けられる予定の第2段階を開始するために、直ちにコミュニケを発表した。

ジョスパン首相は慎重にも、政府が目指している選択についてまったく指示を与えなかった。労使ともに格差が大きいと考えている制度間の調整については、沈黙を守らなければならない。首相は、「フランス人は異なる制度間の対立も強制的な均一化も望まない」と述べるにとどめている。唯一確実なのは、新たな協議段階が、ドミニク・ストロス=カーン経済相、エミル・ズュカレリ公務相、ジャン=クロード・ゲソー運輸相などの関係閣僚の「協力」を得て、マルチーヌ・オブリ雇用・連帯相を中心に進められていくことだ。

行政計画本部のシャルパン委員長は8カ月の作業の結果、暗い予測に到達した。すなわち、平均寿命の伸びとベビーブーム世代の大量引退による「人口ショック」のために、すべての制度が2040年に深刻な赤字に見舞われるという。

しかし、首相は行政計画本部が提案した拠出期間の42.5歳への延長に関して態度を明らかにしないように気をつけている。対照的に、フランス企業運動(MEDEF)やコペルニク財団(左派の活動家たちで構成)が主張する解決策は「非現実的」だと一蹴した。前者は拠出期間を45年(180四半期)に延長することを提案し、後者は・必要ならば・拠出額引き上げという処方箋を重視している。この両者間の距離は遠く、調停もまったく行われていない。

ジョスパン首相はコミュニケの中で、3つの原則を定めている。第1の原則は、「フランスの社会契約の中心」である賦課方式による諸制度の強化だ。「それぞれの制度はそれぞれの独自的な特殊性を考慮しながら、このプロセスに加わらなければならない」。

第2の原則は、「完全雇用社会の再建」である。さまざまな調査が示すところによると、フランス人は雇用問題に手を着けずに退職年金を改革できるとは信じていない。首相府は雇用問題を解決できると言う。すなわち、1980年代にインフレを克服するに到ったのと同じ決意で臨めば十分だという。

第3の原則は、「段階的な改革」だ。首相府はフランス社会が退職年金改革に立ち向かえるほど成熟していないと確信している。実際の事例調査がこの見方を裏づけている。1995年のジュペ改革も苦い失敗に終わった。望ましいモデルと考えられているのがカナダだ。したがって、政府はカナダの先例と結びつける委員会の設置を労使当事者に提案する。

重要なのはジュペ改革との違いを際だたせることだ。ジョスパン首相はパリジャン紙とのインタビューの中で、「2年ほど前から私の政府が前任者のジュペ元首相ときわめて異なる方法で作業を進めていることが、おそらく理解されていると思う。すべての大きな問題に関して、私は意見を聞き、耳を傾け、対話をしてきた。私は情報の仕事を専門家に任せ、閣僚たちに話し合いを行うように求めてきた」とし、「この方法はこれまでのところかなり有効である」と考えている。

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