「最低賃金」低インフレを反映して微調整

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

メーデーの定例行事として大統領によって発表される「最低賃金」が、今年は2日前の4月29日ドルネレス労相より136レアルと発表された。これまでの130レアルと比較し4.61%の上方調整となった。当日の為替相場では81ドル相当となる。この結果、6月に支払われる給料からこの調整額が適用されることになる。今回の設定基準として4月末日までの過去1年間の経済指数を基にしてあるが、因みに基礎食品バスケットの調整は同期1.63%、サンパウロの消費者物価指数はわずか0.56%というのを根拠にしており、低インフレを反映しているが、深刻な世相で最低賃金の引き上げを期待した低所得者層並びに労組は大きな不満を表明している。

IBGE(ブラジル地理統計院)によると、現在収入が最低賃金あるいはそれ以下の層は全国で21.2%である。その内訳は東北伯地方がもっとも多く36.1%、内陸北部地方が24.5%、中西部地方が19.6%、南東地方が13.9%、南部地方が14.2%となっている。今回の引き上げはこれらの労働者や年金受給者の基準となる。年初の大幅通貨切り下げに伴うインフレ再燃から、労組は最低賃金の大幅な引き上げを求めていたが、政府はインフレ率が予想以上の落ち着きを見せていることと、厳しい財政調整実施下で最低賃金の引き上げが巨額の赤字を抱える年金会計に与える影響を考慮して決定した。

今回の引き上げでも年金の支出は95億レアルに上がり、昨年の78億レアルに対し17億レアルの支出増になる。ちなみに今年1年の年金受給者は1820万人で、そのうち1300万人は最低賃金層とみられている。ただし、最低賃金以上の年金もこの率で調整される。2大労組の一つ CUT のビセンチンニョ委員長は政府の無策を指摘しながら、現在の状況から判断して45%アップの188レアルを妥当と主張している。一方、フォルサ シンジカル(組合の力)も同様な批判をしながら最低30%アップの170レアルを主張している。

大統領は140レアルに調整する意向を持っていたというが、世界の不安を集めたブラジル通貨危機の発生から4カ月、事態の収拾はできたとして欧州各国へブラジル向け投資の再開呼び掛けに旅立った。

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