ボーイング社、労組に下請け契約に関する発言権拡大へ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

航空機製造のボーイング社は、部品生産を下請けに出すかどうかに関する決定について労働組合に広範な発言権を与える可能性があるとしており、これが今後の労使交渉の焦点となると考えられる。同社は、国際機械工組合(IAM)をはじめ、主要な組立工、エンジニアリング諸組合に属する従業員8万6000人の労働協約締結に向けた交渉を1999年中に控えており、今回の意思表示は同社が交渉に臨む基本姿勢について見通しを与えてくれる。

同社のジェリー・カルフーン従業員・労働組合関係担当副社長によれば、労働協約の取り決めを見直し、費用や、近い将来の下請けに関する意思決定についての詳細な情報を労働組合に提供する方法について検討中である。現在、ボーイング社は下請け業者への発注を増加させつつあるが、生産を外注しない代替案について分析している。しかし、同社の歩み寄り姿勢をもってしても、労働組合が労使交渉の行方を楽観できるとは限らない。特にワシントン州、オレゴン州、カンザス州で商業航空機を製造している約5万2000人のIAM組合員は9月1日に労働協約の期限が切れるが、実質的に利益が出ていない商業機製造工場で働いているので、1999年6月に始まる労使交渉で、多くの難しい問題をめぐっての鍔(つば)迫り合いが予想されている。

1995年末、ボーイング社とIAMは69日間のストで激しく衝突したが、その時の主要争点は雇用保障、医療、そしてペンション(年金)であった。最近の調査でも、これらの問題が組合員の関心事となっている。1995年のスト以来、ボーイング社は生産に深刻な問題を持っており、株価は30%下落、従業員約5万人を解雇し始めた。最近の好況で同社の収入は増加したが、その最中で行われている解雇に従業員は幻滅し、態度を硬化させた組合員もある。1999年には、記録的な生産量となる620機の飛行機を製造するための労働者が必要なことから、労働組合の交渉力が強いとボーイング社は認めている。しかし、2000年には製造台数が480機程度にまで減少すると見られている。機関投資家は、ボーイング社株主にとってストライキを回避することが最も重要な課題であると分析しており、ボーイング社が労働組合に強硬姿勢を取り難い一因になっている。

米国では自動車製造のフォード社などのように労使協調路線を選択する企業がいくつか現われており、ボーイング社の労使交渉は、その協調路線が大手製造業でどのように展開していくのかを占う意味で最も注目されている労使交渉の一つである。同社における新たな変化は労働者と情報を共有することであると、1995年のストライキ直後に最高経営責任者(CEO)兼取締役会議長に就任したフィリップ・コンディット氏が述べている。同氏は、ワシントン州で3万8000人の組合員を代表しているIAMディストリクト751のビル・ジョンソン組合委員長と共に、非労働組合の下請業者と受注で競り合うために必要な情報を全て労働組合に提供するという前例のない試みを検討中である。さらに、IAM は北西部の諸大企業と協力して、医療サービス提供者から安価なサービスを獲得することを交渉中で、これも実現すれば労使協調の成果として革新的なものになる可能性があるという。

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