社会保障制度における退職年金額

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年5月

社会保障制度における退職年金件数の増大は、過去10年で目を見はるものがある。1988年には退職年金件数が260万件ほどだったのを考えれば、10年で実に65%増えたことになる。

一方、退職年金件数の増大と並行して、社会保障制度への加入者数が増えたわけではない。1989年には退職年金1件を加入者約4.5人が支える比率だったものが、現在では加入者3人強の割合になっている。退職年金件数の成長は一律でなく、人口の高齢化に伴いスピードを増してきた。1998年のように社会保障制度に加入する労働者数が大きく増えた年でさえも、退職年金1件に対応する加入者数は減る一方である。

過去10年間を振り返ってみると、退職年金の増大は賃金上昇率およびインフレ率を上回っている。最後の年である1998年の場合だけこれが逆になっているが、低額の年金受給者の増加が大きかったためと考えられる。

社会保障制度の納税ベースの退職年金額は、制度内の項目の違いによって大きく異なる。1998年11月の時点で年金額がもっとも大きかったのは、炭坑労働特別制度に加入している労働者4万8000人で、年金額は平均16万9000ペセタである。逆に年金受給者が16万人余りいる家事労働従事者の項目では、平均年金額はわずか5万4200ペセタにすぎない。年金受給者230万人を抱える一般制度の項目では、年金額は平均で10万3000ペセタとなっている。

また同じ項目であっても、年金を受給する地方による違いも大きい。例えば、北部のバスク地方では年金の平均額が10万5000ペセタであるのに対し、南部のエストレマドゥラでは約7万ペセタ余にとどまる。これは地方ごとの経済構造の違いによるもので、農業中心の地方では賃金水準も低く、社会保障制度への加入期間も一般に短いため、早くから工業化が進んだ地方に比べ年金額もそれだけ少なくなっているのである。この差は拡大の傾向にあり、1988年には年金額が最高の地方と最低の地方の差が38.8%だったのが1998年には50.9%になっている。

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