労働災害損害58億ドル

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年5月

内国工業連合会がまとめた1996年までの過去5年間の公式労働災害によれば、年間平均災害件数は43万件、これによる年間損害は58億ドルである。58億ドルのうち、85%は労働災害が起きた企業が保健衛生費、罰金、就労困難のための手当、その他で支払っており、この追加支出はいずれ生産コストとして加算され、械金属消費者が払うとコメントしている。労災の多発業種は採鉱(石油、石炭)、製造業(木材加工、家具、パルプ、非金属加工、機、電子電気)、建設、運輸(水運)の順となっている。1996年に発生した労災35万6000件のうち4万7338件は製造業である。職業病を診断する新しい技術が開発された結果、サービス部門や、これまで関心を持たれなかった部門も労災の存在が明らかになり始めた。銀行を含めた金融仲介業はキーを叩くような、同一作業を繰り返すことによる腱や神経の障害による賠償支払い要求が増加している。農業労働者は農薬中毒の問題で6人に1人の割合で医師の診断を受けている。

政府は労災対策として1978年に企業が採用すべき最低の労災対策規定第1号を発令し、現在29号まで発令して、各部門毎に専用規定を設けている。これで1970年代に年間約200万件であった災害が、現在は40万件台に下がった。これでも国際労働機構のランキングでは、ブラジルは世界14位の労災多発国であり、パナマより悪い。しかも未届け労災は推計さえもしない。1980年に労災件数140万件で4800人の死亡であったものが、1997年は36万900件の労災で2600人の死亡となっており、労災対策が不備だった時期の死亡率と、対策が厳しく要求されるようになった現在の死亡率を比較すると、明らかに疑問が残る。これは事故を労働者が独自に申告して、賠償を要求する傾向が増えているためで、労働事故死亡でさえも、公式記録は正確でないことを証明している。その一方では行政担当者の意思で資料が左右されることを表わしている。労働省の資料では1994年に農業は労災で2位であったものが、政権が交代した1965年には5位内にも入っていない。

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