世界4位の失業大国

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

ブラジルの記事一覧

  • 国別労働トピック:1999年5月

労働経済の専門家が世界96カ国の公式資料を比較して、ブラジルは1994年以来1998年まで世界4位の高い失業率を維持していると発表した。1989年の11位から急速に上昇しており、失業は国際情勢よりも国内に原因があると証明している。1998年は5.09%の史上最高を記録した。1999年にはこれを上回ると政府自体が予想している。ブラジルは世界の経済活動人口の3.2%を占めているが、人口に対する失業者の割合は平均より59%大きいと計算している。公式統計では5.09%、全国で665万人の失業となっている。

カルドーゾ政権第一期の4年間に公式失業率は6.5%から9.0%へ38%増加した。人数にすると6大首都圏の失業者は220万人増加して1998年に660万人となった。政権2期目はさらに悪化する兆候である。労働経済の専門家の研究によると、1999年のGDPが1.8%後退すると失業率は11.1%に上昇する。1990年代の失業増加は労働者の収入減少を伴った。1980年には給料、年金、自営の所得、公務員給料を合計すると、GDPの50%であったものが、1998年には36.3%へ低下した。これは資本集約的産業の所得が増加し、雇用は低い給料のクラスが増加していることを証明する。学歴による所得も低下した。工業部門の場合,1992年に大学卒の労働者の72%は、最低給料の10倍以上を取っていたが、1998年には59%へ下がった。サンパウロ州立データ処理センターの資料では、1985~1998年にサンパウロ首都圏の失業者に占める中等科卒の割合は、6.7%から14.9%へ増加しており、学歴が高くても、雇用が保証されるとは限らなくなった。

サンパウロ商業協会の予想によると、世界有数の高金利、クレジット不足、小売りの冷え込みで苦境に立たされている商業部門では解雇が増加する。また他部門でも解雇が増加し、国民所得を低下させ、小売りの回復を遅らせる。生産部門は経済後退に合わせて、生産計画を再編成する必要があり、生産部門と商業部門の両方で1999年は解雇が増えると予想している。1月中旬の為替切り下げ以来、物価上昇が始まって、消費者の購買力が低下しており、今後の失業増加、支払い不能増加予想から商業部門は消費者へのクレジット供与を制限して、消費市場をさらに冷え込ませると見られている。また、消費者は為替切り下げと同時に引き上げた高金利のインパクトをまだ感じておらず、もし3月以降も小売りが低迷し、高金利、失業増加、支払い不能増加が続くなら、増税が重なって商業部門の状況は一段と悪化すると商業協会は予想している。

1999年5月 ブラジルの記事一覧

関連情報