労組が給料引き下げに反対

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年5月

1月中旬に30%以上の為替切り下げが起こり、物価が上昇したため、労組と労働者は、企業の給料引き下げ提案に反対している。労組側は、インフレのない時期には、解雇をしない条件で給料引き下げの提案も受け入れられるが経済の先行き不安が大きい現在では給料の削減に限度を設けるべきだと考えている。また給料交渉は状況が悪化した場合の条件も契約に加えておくべきだと主張している。企業は、部門次第ではかなり強いリセッションを予想しているために、労使交渉に消極的になっている。労組側も交渉の進展に迷いがあるため、交渉全体が停滞している。

労組の社会経済研究機関であるDIEESEの予想によると、今後インフレが進んだ場合、工業部門と公務員部門が給料損失補充で最も困難な部門となる。工業部門は人員削減が続いており、労使交渉は給料補充よりも雇用維持が主体となっており、公務員部門は相次ぐ財政調整計画と構造改革で、人員は削減するしかない状況である。このため工業部門と公務員部門は労働時間と給料を下げるような交渉が今後増加すると予想している。

一度失業すると再就職が困難な現在、雇用維持を優先するためには、労働時間と給料を下方に調整するしかない。また状況が悪化すると、生産と給料を連結するような考えは通用しなくなる。リセッション次第では既に低下した給料をさらに犠牲にすることになるだろうとDEESEは予想している。

また危機の影響を余り受けていない部門でも、企業はインフレに合わせた給料の調整に抵抗する。労組にとっては企業が、消費後退に対応する手段として給料を含めた全ての条件を下方修正するのではないかとの心配がある。ことにIMFとの協定が最初から守れず、1月中旬から2月中旬までかけて、目標修正交渉を行ない、政府部門については今後再度の厳しい財政調整を要求されるために、公務員は困難な立場に立たされる。ベア交渉は困難、失業は増加が予想される中で、インフレ再来の不安がつのってきている。30%以上に達する為替切り下げは輸入品価格の引き上げに直結し、輸入部品や原材料を使用する工業製品の価格上昇も起きている。消費低下で売上が振るわない小売商との間では、仕入れ価格の交渉が続いている。1月から2月に増税、為替切り下げを理由に4回も値上げを発表した4輪組み立て工業のような部門もあり、インフレの不安は強まった。政府はインフレ抑制と外資引き揚げの引き留め手段として、基本金利を年率40%へ引き上げた。生産部門では、この高金利が経済活動を低下させ、失業増加、労働者の収入低下を起こして、リセッションの悪循環に陥るおそれがあると懸念している。

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